イオンディライト(9787)|会計処理問題に係る報告書をレビュー

持ち株のイオンディライト(9787)が「当社連結子会社カジタクにおける会計処理問題に係る特別調査委員会からの中間報告書の受領について」を開示していましたので、内容を確認しました。

1.イオンディライトについて

イオンディライトはイオン系列のビルメンテナンス会社です。

同社は業界で国内シェアトップ(3~4%程度)を有しており、売上高は約3,000億円、営業利益は約170億円、ROEは10%を超える安定した高収益企業です。(でした)

セグメント別の売上構成は以下の通りであり、不祥事を起こした「カジタク」は全社売上の7%を占めるサポート事業の中に含まれています。

2.カジタクについて

カジタクは、2011年にイオンディライトが買収した連結子会社であり、一般消費者向けに家事代行サービスを手掛ける「家事支援事業」と小売店の店舗にコイン式のコピー機や証明写真機を設置する「店頭支援事業」を展開しています。

業績(会計処理の修正前)は以下の通りで、売上高は約90億円とイオンディライトの「サポート事業」の約半数を占めています。

今回は、上記2事業のうち「店頭支援事業」において粉飾決算が発覚しました。

店頭支援事業は、イオン等の店舗に設置する複写機やコピー機を仕入れ販売する事業です。

事業の構造は以下の通りで、①機器の仕入額と②販売額、③保守メンテナンス収入と④保守再委託費用のマージンが利益となります。


代理店商売でさほど儲かるように見えませんが、実態は、やっぱり全然儲かっていなかったようです。

3.カジタクの粉飾内容

まず粉飾の規模から申し上げると、過去6年間で総額96億円年当り16億円の利益が押し上げられていたことが判明しました。

イオンディライトの連結営業損益の約1割ほどの金額ですので、決して小さな粉飾ではありません。しかし、イオンディライトの自己資本は960億円以上ありますので、本体が倒産するレベルでは無いと言えるでしょう。

粉飾の内容は多岐に渡っていますが、金額的な重要性が高く、杜撰な事例を2~3件紹介いたします。

(1)損益調整による架空売上の計上

カジタク社内では、「顧客への請求書等に基づく正しい売上高」のほか、「営業部門が作成した販売計画資料」という2種類の売上データがありました。もちろん請求書に基づく売上が正しい数値です。

営業部門が作成する販売計画資料は、個々の営業担当者が販売の可能性が生じた時点で作成するものであり、既に販売の見込が消えた案件も消去されていないものです。

当然、正しい売上と営業部門の作成する販売計画は一致しないものですが、そのような場合に「営業部門の作成した販売計画を正しい会計数値として経理処理を行うルール」となっていました。

これに伴う粉飾額は累計26億円となります。

(2)未設置物件請求

カジタクは、小売店とコピー機や写真証明機の商談を進め、最終的には代理店C社を通じて小売店にレンタルを行っていました。


代理店C社からの販売代金は、店舗への「複写機等の設置に係る確認書」をもって支払われるルールとなっています。

カジタクは、機器が店舗に設置される前に「確認書」をエンドユーザーから貰って代金を前倒しで受領したり、酷い場合には店舗への設置予定が無いにも関わらず「確認書」を偽造してC社から代金を回収していました。

これに伴う粉飾額は累計23億円となります。

(3)仕入れの未計上等

カジタクは、複写機や証明写真機を仕入れて、代理店C社に販売しています。

当然、機器の仕入金額は売上原価として損益計算書に反映されるべきですが、同社は仕入(売上原価)として計上していませんでした。
これに伴う粉飾額は17億円となります。

(4)発覚の経緯

カジタクは、上記のようにイノベーティブな会計処理を行った結果、損益計算書上は儲かっているものの、資金繰りに窮することとなっていまい、親会社のイオンディライトへ資金借入をお願いすることとなりました。

しかし、カジタクは期日になっても借入金を返済することが出来ず、経営状態を訝しんだイオンディライト調査を実施、粉飾が発覚することとなったようです。

4.所感

(1)職業人として

僕は一応経理マンをしているのですが、上場会社の子会社でこんな酷い経理処理を行い6年以上も発覚しないというのが信じられません。

監査法人だって、在庫の棚卸や残高証明書の取得を行っているハズですよね?

(2)イオンディライトの評価について

イオンディライトの「サポート事業(売上200億円)」については、実質的に利益貢献が無い部門であることが判明しました。
過去の業績についても、営業利益やEPSで▲1割ほどの下方修正、ROEも1~2%低かったものと見做す必要があると思います。

とはいえ、サポート事業は同社の中で最も小さな事業部であり、本業であるビルメンテナンス事業の収益力や競争力が痛んだわけではありません。

今回の事実を市場がどのように捉えるかは分かりませんが、過剰反応(ストップ安等)が見られるのであれば、買い増し等を考えても良いのではないかと思います。

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