こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。
今回は、マンション管理会社最大手の日本ハウズイングの分析を行いたいと思います。
目次
1.マンション管理業界について
2.日本ハウズイングの企業概要
3.財務状況
4.まとめ
これらについて管理組合から管理を受託するマンション管理業界は、管理費と共用部修繕工事を含めると約1.5兆円の市場規模があると言われます。
マンション管理会社は、大きくマンション分譲会社系列の「デベロッパー系」と安い管理費がウリの「独立系」に大別されます。
分譲マンションの新規供給があった場合、その管理業務は基本的にデベロッパー系の管理会社が請け負うこととなります。
これに対して、独立系の管理会社は「リプレース」と呼ばれる他社管理物件への営業を行い、デベロッパー系から顧客を奪っていくという業界構造となっています。
近年、分譲マンションの新規供給戸数はやや落ち込んでいるものの、ストック数ベースでは堅調に伸びており、業界全般として管理戸数は今も増加傾向にあります。
業界の上位5社は以下の通り
日本ハウズイングは、管理戸数44万戸と国内トップであり、管理戸数の伸び率も上位3社の中で最も大きくなっています。
近年の業界の課題としては、人手不足によってマンション管理人不足が深刻化していることが挙げられます。
もともと、マンション管理人は定年後のセカンドキャリアという位置づけの仕事ですが、民間の定年延長によって人が集まりずらくなっています。
このため、赤字の管理物件からの撤退や管理費の値上げが業界全体として行われている状況にあるようです。
1970年に管理マンション第一号を受託し、1993年には管理戸数が10万戸を突破と順調に業容を拡大してきます。1994年には海外進出も開始しました。
同社の歴史において触れておくべきトピックとして、2008年頃の原弘産による買収騒動があります。
当時の原弘産は、中古マンションの仲介事業拡大を目指しており、日本ハウズイングが有する30万戸超(当時)の管理ストックに目を付けました。入居者が物件を売りたがっているといった情報は、管理会社が誰よりも早くキャッチできる可能性があるためです。
一方の日本ハウズイングは、不動産開発事業の失敗により業績・株価が低迷しており、創業者である故・井上博敬氏の妻であった大株主(10%)が、経営陣への不満もあって原弘産に持ち株を売却。
これを契機に原弘産が株を買い始め、同業の独立系マンション管理会社である「合人社計画研究所」も市場で株を取得し始める等、経営権を巡った大騒動となりました。
最終的には、現経営陣の小佐野一族が、金融機関・社員・OBといった株主層の支持を固めて僅差で買収を阻止。
原弘産は持ち株をリログループへ売却することで撤退、合人社グループは株主として残り、今は沖縄や北海道で合弁会社を設立するなど協力関係を構築。
これによって現在の株主構成の枠組みが出来上がりました。
利益の柱となっているのは、国内シェア首位の「マンション管理事業」と管理物件における大規模修繕工事を主体とする「営繕工事業」の2セグメントであり、この二つで売上の8割、利益の大半を稼いでいます。
ネットの情報等を見ると、管理費は安く抑えつつ、管理ストックから発生する営繕工事により利益を得るという戦略を取っているようです。
また、地域別の売上高を見てみますと、内需型企業と見せかけて海外展開も進んでおり、売上の約2割が海外向けとなっています。
台湾については、管理戸数約10万戸に達し、台湾における分譲マンション管理においてトップシェアを有しているとのことです。
また2016年にはベトナム最大手の清掃会社パングループ[PAN]を買収する等、海外における不動産周辺ビジネスの拡大にも力を入れています。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標の推移」を拾いました。
多角化の失敗により一時期業績が悪化したものの、近年はEPS・配当金を順調に伸ばしています。
顧客であるマンション管理組合が管理会社を切り替えようとした場合、組合の理事会等で決議をし、入札をして…と合意形成や手続きに多大な手間が掛かります。
同社の事業については、「乗り換えコスト」という経済上の堀(Economic Moat)を有しているストックビジネスと考えて良いと思います。
・業績の安定性 ○
・経済上の堀 有(狭)
これを見ると、今後5年間において国内マンション管理戸数を5万戸積み上げ、売上高は1,400億円、営業利益は98億円以上(利益率7%)を目指す内容となっています。
単体よりも連結ベースの方が売上の伸びが大きくなっていますので、海外事業の拡大も同時に目指しているのでしょう。
中計を達成できた場合、営業利益は前期比+59%の増、EPSも340円ほどに拡大(前期は216円)することが見込まれます。
・予想PER 9.78倍
・実績PBR 1.23倍
・配当利回り 3.16%
足元の株価は今月になってから急激に下げています。
特段個別の悪材料が出ているわけではなく、流動性がまったく無い中で、一部投資家の売りが売りを呼ぶスパイラルを招いただけと見ています。
(もちろんバッドニュースが隠れている可能性もありますが。)
ただ、日本ハウズイングは安定成長株であり、過去5年を見るとPERは平均16倍、PBRは平均2.17倍ほどに評価されていた銘柄です。バーゲンセールと言って良い水準と思いますので、積極的に買いを入れているところです。
なお、投資をする際は自己責任でお願いいたします。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
今回は、マンション管理会社最大手の日本ハウズイングの分析を行いたいと思います。
目次
1.マンション管理業界について
2.日本ハウズイングの企業概要
3.財務状況
4.まとめ
1.マンション管理業界について
全国で約644万戸ある分譲マンション。これらについて管理組合から管理を受託するマンション管理業界は、管理費と共用部修繕工事を含めると約1.5兆円の市場規模があると言われます。
マンション管理会社は、大きくマンション分譲会社系列の「デベロッパー系」と安い管理費がウリの「独立系」に大別されます。
分譲マンションの新規供給があった場合、その管理業務は基本的にデベロッパー系の管理会社が請け負うこととなります。
これに対して、独立系の管理会社は「リプレース」と呼ばれる他社管理物件への営業を行い、デベロッパー系から顧客を奪っていくという業界構造となっています。
近年、分譲マンションの新規供給戸数はやや落ち込んでいるものの、ストック数ベースでは堅調に伸びており、業界全般として管理戸数は今も増加傾向にあります。
出典:国交省 分譲マンションストック戸数 |
業界の上位5社は以下の通り
近年の業界の課題としては、人手不足によってマンション管理人不足が深刻化していることが挙げられます。
もともと、マンション管理人は定年後のセカンドキャリアという位置づけの仕事ですが、民間の定年延長によって人が集まりずらくなっています。
このため、赤字の管理物件からの撤退や管理費の値上げが業界全体として行われている状況にあるようです。
2.日本ハウズイングの企業概要
(1)沿革
同社は1966年に小佐野博氏と井上博敬氏によって設立されました。1970年に管理マンション第一号を受託し、1993年には管理戸数が10万戸を突破と順調に業容を拡大してきます。1994年には海外進出も開始しました。
同社の歴史において触れておくべきトピックとして、2008年頃の原弘産による買収騒動があります。
当時の原弘産は、中古マンションの仲介事業拡大を目指しており、日本ハウズイングが有する30万戸超(当時)の管理ストックに目を付けました。入居者が物件を売りたがっているといった情報は、管理会社が誰よりも早くキャッチできる可能性があるためです。
一方の日本ハウズイングは、不動産開発事業の失敗により業績・株価が低迷しており、創業者である故・井上博敬氏の妻であった大株主(10%)が、経営陣への不満もあって原弘産に持ち株を売却。
これを契機に原弘産が株を買い始め、同業の独立系マンション管理会社である「合人社計画研究所」も市場で株を取得し始める等、経営権を巡った大騒動となりました。
最終的には、現経営陣の小佐野一族が、金融機関・社員・OBといった株主層の支持を固めて僅差で買収を阻止。
原弘産は持ち株をリログループへ売却することで撤退、合人社グループは株主として残り、今は沖縄や北海道で合弁会社を設立するなど協力関係を構築。
これによって現在の株主構成の枠組みが出来上がりました。
(2)事業内容
まず、同社の決算説明資料からセグメント別の業績を見てみます。出典:2019年3月期 決算説明資料 |
ネットの情報等を見ると、管理費は安く抑えつつ、管理ストックから発生する営繕工事により利益を得るという戦略を取っているようです。
また、地域別の売上高を見てみますと、内需型企業と見せかけて海外展開も進んでおり、売上の約2割が海外向けとなっています。
台湾については、管理戸数約10万戸に達し、台湾における分譲マンション管理においてトップシェアを有しているとのことです。
また2016年にはベトナム最大手の清掃会社パングループ[PAN]を買収する等、海外における不動産周辺ビジネスの拡大にも力を入れています。
3.財務状況
(1)財務数値
まずは日本ハウズイングの過去の業績推移を確認します。数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標の推移」を拾いました。
多角化の失敗により一時期業績が悪化したものの、近年はEPS・配当金を順調に伸ばしています。
(2)収益性
①定性分析
日本ハウズイングの過去10年間のROEは13%と比較的高い水準を維持できています。顧客であるマンション管理組合が管理会社を切り替えようとした場合、組合の理事会等で決議をし、入札をして…と合意形成や手続きに多大な手間が掛かります。
同社の事業については、「乗り換えコスト」という経済上の堀(Economic Moat)を有しているストックビジネスと考えて良いと思います。
②評価
・収益力の高さ ○・業績の安定性 ○
・経済上の堀 有(狭)
(3)成長性
日本ハウズイングは、2019年5月15日に「中期経営計画の策定に関するお知らせ」を公表しました。出典:日本ハウズイング「中期経営計画策定に関するお知らせ」 |
これを見ると、今後5年間において国内マンション管理戸数を5万戸積み上げ、売上高は1,400億円、営業利益は98億円以上(利益率7%)を目指す内容となっています。
単体よりも連結ベースの方が売上の伸びが大きくなっていますので、海外事業の拡大も同時に目指しているのでしょう。
中計を達成できた場合、営業利益は前期比+59%の増、EPSも340円ほどに拡大(前期は216円)することが見込まれます。
4.まとめ
最後に現時点(2019年5月)時点の日本ハウズイングの株価指標を確認します。・予想PER 9.78倍
・実績PBR 1.23倍
・配当利回り 3.16%
足元の株価は今月になってから急激に下げています。
特段個別の悪材料が出ているわけではなく、流動性がまったく無い中で、一部投資家の売りが売りを呼ぶスパイラルを招いただけと見ています。
(もちろんバッドニュースが隠れている可能性もありますが。)
ただ、日本ハウズイングは安定成長株であり、過去5年を見るとPERは平均16倍、PBRは平均2.17倍ほどに評価されていた銘柄です。バーゲンセールと言って良い水準と思いますので、積極的に買いを入れているところです。
なお、投資をする際は自己責任でお願いいたします。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
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