こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)です。
連休はダラダラとSNSを巡回する等、とても有意義な時間を過ごしております。
さて、ツイッターを眺めていましたら、投資クラスタ内でPERについての論争が起きているようでした。
きっかけになったと思われるのがこちらのツイート
語彙を抹殺すべきとは穏やかではありませんね……
PERは、株価÷一株当たり利益(EPS)で計算します。
分母となる一株利益は景気動向によって大きくブレるため、PERに着目すると判断を誤る可能性が大きいという趣旨のようです。
リプ欄でも宗教論争が盛り上がって楽しそうだったので、この件について僕も少し考えてみてみました。
以下は「ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)」で紹介された調査結果になりますが、1952年~2015年までの米国市場を対象とした調査では、PERを用いた投資によって年率6.3%のプレミアム、1980年1月から2014年6月までの先進国市場では、年率7.3%のプレミアムを得られたとのことでした。
長期間・複数の地域で優れたリターンを提供したことは、低PER投資が有効な戦略であることの証明です。
特に経験則として、利益変動の大きい市況株は、むしろPERが高かったり、赤字の時の方が割安と言われます。
そこで次に、個別株投資に低PERが有用か検討します。
ここでは、自動車部品メーカーである丸順(3422)を材料にしたいと思います。
生産拠点は日本国内のほかに中国とタイ。名証2部と割安な銘柄の多い地方上場銘柄です。
同社のPERを見ると、2018年末頃より3倍台で推移しています。
特別利益なしでPER3倍台はなかなか見れません。単純にPERを見れば全上場企業でトップクラスに割安な銘柄です。
長期の業績推移は以下の通り。
利益水準は不安定で、過去10年間に4回の最終赤字を計上しています。
15~16年には、米国事業からの撤退等に伴い累計63億円の赤字を計上。自己資本も薄く、17年と18年には2回の増資を行いました。
しかし、丸順は利益変動の大きい企業です。
ここ数年間は、自動車生産台数が好調に推移するとともに、為替相場も円安寄りと自動車部品セクターの事業環境は良好でした。
同社が好況期の業績を今後も維持できるかは不明瞭であるため、単年度の利益に基づくPERで割安度を判断するのは不適切と考えます。
少なくとも、そういった市場の懸念が反映されているからこそ、PERがこれだけ安くなっていると見るべきでしょう。
ここでは、投機バブルの研究で知られるロバート・シラー教授の考案したシラーPER(CAPEレシオ)を用いて分析してみたいと思います。
シラーPER = 株価 ÷ 過去10年間の一株当たり利益の平均値(インフレ調整済)
※日本のインフレ率はほぼゼロですので、単純にEPSの平均を計算。
過去10年間の丸順の平均EPSを計算してみると……あれ、なんと▲9.4円/年の赤字。多額の赤字を連発しており、シラーPERを計算することすらできません。
仕方ないので、大幅な損失を計上した15.3月期、16.3月期を異常値として除外して、平均EPSを再計算してみます。
最悪の2カ年を除いた10年間の平均EPSは70.0円、これに基づくPERは9.3倍。
有利な計算方法を採用してもこの水準だとちょっと微妙ですかね。
仕手的な材料が出なければ、ホンダ車の販売動向や四半期決算の進捗を見て、業績の堅調さが確認できれば徐々に上昇していくイメージでしょうか。
株価チャートを見ると、大幅な赤字を出してPERが算出できなかった2015~2016年頃が目先の底値であり、「むしろPERが高かった時が買いタイミングだった銘柄」と言えそうです。
従って、冒頭の山本潤氏による「初心者はPERを使用すべきではない」という主張は、僕も適切な助言だと思いました。
連休はダラダラとSNSを巡回する等、とても有意義な時間を過ごしております。
さて、ツイッターを眺めていましたら、投資クラスタ内でPERについての論争が起きているようでした。
きっかけになったと思われるのがこちらのツイート
とにかく、投資家としてまず、投資手法の初歩の初歩は、PERを全く使わないことです。— 山本 潤(DFR投資判断者 & リンクスリサーチ講師) (@links_yamamoto) April 29, 2019
こんなものは、一生涯、無縁でも全く困ることはありません。
あなたの人生の辞書から、PERという語彙を抹殺してください。
これが成功する投資家への第一歩なのです。
業績の変化率の方が株価の変化率の何倍も大きいのに— 山本 潤(DFR投資判断者 & リンクスリサーチ講師) (@links_yamamoto) April 25, 2019
それでも株価が大きく変動すると思っている人は多いでしょうね...
PERの変動率はバカみたいに高い
株価の変動率の倍以上だから...
それでもPERを使う人は多いでしょうね...
語彙を抹殺すべきとは穏やかではありませんね……
PERは、株価÷一株当たり利益(EPS)で計算します。
分母となる一株利益は景気動向によって大きくブレるため、PERに着目すると判断を誤る可能性が大きいという趣旨のようです。
リプ欄でも宗教論争が盛り上がって楽しそうだったので、この件について僕も少し考えてみてみました。
1.低PER投資の有効性
まず、低PERは割安度を判断する際に明らかに有用な指標です。以下は「ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)」で紹介された調査結果になりますが、1952年~2015年までの米国市場を対象とした調査では、PERを用いた投資によって年率6.3%のプレミアム、1980年1月から2014年6月までの先進国市場では、年率7.3%のプレミアムを得られたとのことでした。
長期間・複数の地域で優れたリターンを提供したことは、低PER投資が有効な戦略であることの証明です。
2.個別株投資でも有用であるか
とはいえ、上記の調査は低PER銘柄のバスケットを対象としたものであり、個別銘柄を見た場合に、必ずしも当てはまるわけではありません。特に経験則として、利益変動の大きい市況株は、むしろPERが高かったり、赤字の時の方が割安と言われます。
そこで次に、個別株投資に低PERが有用か検討します。
ここでは、自動車部品メーカーである丸順(3422)を材料にしたいと思います。
(1)企業概要
丸順はホンダ系の自動車部品サプライヤーで、車体骨格等の製品を生産する企業です。ユニプレス(5949)や東プレ(5975)辺りが同業他社となりますね。生産拠点は日本国内のほかに中国とタイ。名証2部と割安な銘柄の多い地方上場銘柄です。
同社のPERを見ると、2018年末頃より3倍台で推移しています。
特別利益なしでPER3倍台はなかなか見れません。単純にPERを見れば全上場企業でトップクラスに割安な銘柄です。
利益水準は不安定で、過去10年間に4回の最終赤字を計上しています。
15~16年には、米国事業からの撤退等に伴い累計63億円の赤字を計上。自己資本も薄く、17年と18年には2回の増資を行いました。
(2)予想PER
公表されている2020年3月期の業績予想は以下の通りで、予想PERは3.8倍と減益を加味しても割安圏ではあります。しかし、丸順は利益変動の大きい企業です。
ここ数年間は、自動車生産台数が好調に推移するとともに、為替相場も円安寄りと自動車部品セクターの事業環境は良好でした。
同社が好況期の業績を今後も維持できるかは不明瞭であるため、単年度の利益に基づくPERで割安度を判断するのは不適切と考えます。
少なくとも、そういった市場の懸念が反映されているからこそ、PERがこれだけ安くなっていると見るべきでしょう。
(3)シラーPER(CAPEレシオ)
市況株は利益が大きく変動するため、単年度の利益水準ではなく過去の平均利益を用いて割安度を判断するのが適当と考えられます。ここでは、投機バブルの研究で知られるロバート・シラー教授の考案したシラーPER(CAPEレシオ)を用いて分析してみたいと思います。
シラーPER = 株価 ÷ 過去10年間の一株当たり利益の平均値(インフレ調整済)
※日本のインフレ率はほぼゼロですので、単純にEPSの平均を計算。
過去10年間の丸順の平均EPSを計算してみると……あれ、なんと▲9.4円/年の赤字。多額の赤字を連発しており、シラーPERを計算することすらできません。
仕方ないので、大幅な損失を計上した15.3月期、16.3月期を異常値として除外して、平均EPSを再計算してみます。
最悪の2カ年を除いた10年間の平均EPSは70.0円、これに基づくPERは9.3倍。
有利な計算方法を採用してもこの水準だとちょっと微妙ですかね。
仕手的な材料が出なければ、ホンダ車の販売動向や四半期決算の進捗を見て、業績の堅調さが確認できれば徐々に上昇していくイメージでしょうか。
株価チャートを見ると、大幅な赤字を出してPERが算出できなかった2015~2016年頃が目先の底値であり、「むしろPERが高かった時が買いタイミングだった銘柄」と言えそうです。
3.まとめ
低PER投資は有効な投資手法ですが、個別株選定に適用する場合は注意が必要な指標です。特に初心者については、一時的な利益水準を持続的なものと誤ってしまうリスクがあるように思います。従って、冒頭の山本潤氏による「初心者はPERを使用すべきではない」という主張は、僕も適切な助言だと思いました。
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