こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。
今回はビオフェルミン製薬(4517)の事業内容・財務状況を分析します。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ
おそらく日本人であれば大半の人が認知している有名商品であり、あえて説明は不要でしょう。
ここでは、会社の沿革と現在の事業体系図に触れたいと思います。
乳酸菌整腸剤「ビオフェルミン」を武田長兵衛商店(現:武田薬品工業)を通じて長らく販売していました。
1995年の阪神・淡路大震災で本社が倒壊するといった苦境もあったものの、ブランドの認知や製品ラインナップの拡大を進めて、安定した成長を続けてきました。
以下は、1990年度以降の売上高と売上高経常利益率をまとめたグラフです。
売上は緩やかな右肩上がり、利益率は最も低い年度で18%、期間の平均では25%と高収益を維持しています。
近年のトピックとしては、2008年に大正製薬からのTOBを受け入れ、同社の連結子会社となったことが挙げられます。
この5年後(2013年)には、親会社の意向もあってかと思いますが、100年近くの取引関係があった武田薬品工業との独占販売契約を解除し、親会社の大正製薬を通じて製品を販売する商流に変更しました。
同社の製品は、病院で処方される医療用と、ドラッグストア等で販売される一般用(医薬部外品を含む)に分かれており、医療用が売上の約3割、一般用が約7割を占めています。
いずれの製品でも、すべて大正製薬を通じて販売しており、医療用については、かつての主得意先である武田薬品工業が二次卸として販売しています。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標の推移」を拾いました。
業績には安定感がありますね。
2016年度に一度業績が落ち込んだのは、商流の切替(武田薬品工業→大正製薬)による一時的な要因と見られます。
一方で、キャッシュリッチ(後述)にも関わらず、ここ10年増配が無いことはマイナス要素でしょう。
とある調査によれば、整腸剤の消費者のうち55%は固定したブランドを選ぶと回答しており、新規参入者がビオフェルミンのシェアを奪うのは難しいでしょう。
ただ、かつて製品を独占販売していた武田薬品工業との間では、どうも一定の"しこり"が残ってしまっているようで、武田は今年の3月に「ビオスリー」という整腸剤を自社ブランドで販売し始めました。
医療用の製品は、今も武田薬品工業を通じて販売していますので、この関係が拗れてしまうのは懸念事項かなと思います。
・業績の安定性 ◎
・経済上の堀 有(狭)
台湾や香港では新ビオフェルミンS錠が人気とのことであり、欧米向けの栄養補助食品(サプリメント)需要も増加傾向にあるとのことです。
流動資産の現金預金が148億円あり、なんと総資産の約半分を占めています。
同社の売上は約110億円ですので、年商の1.4倍の現預金を溜め込んでいる状況です。(ちょっと多過ぎですね…)
なお、貸方の方を見ると有利子負債はゼロ、自己資本比率は約9割です。
現預金や株主資本が過剰になっているよう思われます。
・予想PER 11.86倍
・実績PBR 0.98倍
・予想配当利回り 2.63%
指標面では過去5年間の最安値圏にありますが、ビオフェルミン製薬は資本政策面に問題を抱える企業であり、株価上昇のカタリストに欠ける点がネックです。
同社は、過去10年間で現預金を+100億円近く増やしており、キャッシュフローの安定性を見ても、一層の株主還元を行う余地があることは明らかです。
しかし、ここ10年間、増配や自社株買いはまったく行われておらず、ROEの水準も改善しておりません。これはアベノミクス以降の株式市場の全般的な流れにも逆行しています。
経営陣や従業員もほとんど自社株を保有していませんので、一般株主の方向を向いた経営を推進して頂ける見込みは低いでしょう。
同社の経営陣には「自社がちょっと変な会社である」ということを自覚していただき、例えば、取締役の自社株保有の推奨(SOでなく身銭で買う)、従業員持ち株会の導入等、少数株主が無視されない企業に変身して貰いたいところです。
あるいは、ストラテジック・キャピタルのように、物言う株主が登場することを期待ですかね。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
今回はビオフェルミン製薬(4517)の事業内容・財務状況を分析します。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ
1.ビオフェルミン製薬の事業内容
同社の主力製品は、社名にもなっている胃腸剤「ビオフェルミン」シリーズです。おそらく日本人であれば大半の人が認知している有名商品であり、あえて説明は不要でしょう。
ここでは、会社の沿革と現在の事業体系図に触れたいと思います。
(1)沿革
ビオフェルミン製薬は、1917年(大正6年)に創業。乳酸菌整腸剤「ビオフェルミン」を武田長兵衛商店(現:武田薬品工業)を通じて長らく販売していました。
1995年の阪神・淡路大震災で本社が倒壊するといった苦境もあったものの、ブランドの認知や製品ラインナップの拡大を進めて、安定した成長を続けてきました。
以下は、1990年度以降の売上高と売上高経常利益率をまとめたグラフです。
売上は緩やかな右肩上がり、利益率は最も低い年度で18%、期間の平均では25%と高収益を維持しています。
近年のトピックとしては、2008年に大正製薬からのTOBを受け入れ、同社の連結子会社となったことが挙げられます。
この5年後(2013年)には、親会社の意向もあってかと思いますが、100年近くの取引関係があった武田薬品工業との独占販売契約を解除し、親会社の大正製薬を通じて製品を販売する商流に変更しました。
(2)事業の体系図
ビオフェルミン製薬の現在の事業体系図は以下の通りです。同社の製品は、病院で処方される医療用と、ドラッグストア等で販売される一般用(医薬部外品を含む)に分かれており、医療用が売上の約3割、一般用が約7割を占めています。
いずれの製品でも、すべて大正製薬を通じて販売しており、医療用については、かつての主得意先である武田薬品工業が二次卸として販売しています。
2.ビオフェルミン製薬の財務状況
(1)財務数値
改めてビオフェルミン製薬の過去の業績推移を確認します。数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標の推移」を拾いました。
業績には安定感がありますね。
2016年度に一度業績が落ち込んだのは、商流の切替(武田薬品工業→大正製薬)による一時的な要因と見られます。
一方で、キャッシュリッチ(後述)にも関わらず、ここ10年増配が無いことはマイナス要素でしょう。
(2)収益性
①定性分析
ビオフェルミン製薬は、ブランド力のある消費財を扱うメーカーであり、医薬部外品の整腸剤では国内トップシェアを有します。(競合は、興和新薬「ザ・ガードコーワ」や、「ビオラートミン」といった類似製品)とある調査によれば、整腸剤の消費者のうち55%は固定したブランドを選ぶと回答しており、新規参入者がビオフェルミンのシェアを奪うのは難しいでしょう。
ただ、かつて製品を独占販売していた武田薬品工業との間では、どうも一定の"しこり"が残ってしまっているようで、武田は今年の3月に「ビオスリー」という整腸剤を自社ブランドで販売し始めました。
医療用の製品は、今も武田薬品工業を通じて販売していますので、この関係が拗れてしまうのは懸念事項かなと思います。
②経済上の堀(Economic Moat)
日本国内において同社のブランド価値は大きく、「無形資産」という経済上の堀(Economic Moat)を有していると判断されます。③評価
・収益力の高さ ○・業績の安定性 ◎
・経済上の堀 有(狭)
(3)成長性
ビオフェルミン製薬は急成長の見込まれる企業ではないものの、以下の通り持続的成長に向けた取組を進めており、年数%の緩やかな成長は維持できると思います。①製品ラインナップ拡充
前期においては、お腹の張りを解消する「ビオフェルミンぽっこり整腸チェアブル」という新製品を発売しました。大ヒットとはいってないようですが、第3四半期時点では全社売上の2%程度を占めているようでした。②輸出
同社は海外向け販売にも力を入れており、足元では売上高の4~5%が輸出となります。10年前と比べれば1.5倍くらいに伸びました。台湾や香港では新ビオフェルミンS錠が人気とのことであり、欧米向けの栄養補助食品(サプリメント)需要も増加傾向にあるとのことです。
(4)資産価値
続いてビオフェルミン製薬の貸借対照表を確認します。流動資産の現金預金が148億円あり、なんと総資産の約半分を占めています。
同社の売上は約110億円ですので、年商の1.4倍の現預金を溜め込んでいる状況です。(ちょっと多過ぎですね…)
なお、貸方の方を見ると有利子負債はゼロ、自己資本比率は約9割です。
現預金や株主資本が過剰になっているよう思われます。
3.まとめ
最後に、現時点(2019年4月末)のビオフェルミン製薬の株価指標を確認します。・予想PER 11.86倍
・実績PBR 0.98倍
・予想配当利回り 2.63%
指標面では過去5年間の最安値圏にありますが、ビオフェルミン製薬は資本政策面に問題を抱える企業であり、株価上昇のカタリストに欠ける点がネックです。
同社は、過去10年間で現預金を+100億円近く増やしており、キャッシュフローの安定性を見ても、一層の株主還元を行う余地があることは明らかです。
しかし、ここ10年間、増配や自社株買いはまったく行われておらず、ROEの水準も改善しておりません。これはアベノミクス以降の株式市場の全般的な流れにも逆行しています。
経営陣や従業員もほとんど自社株を保有していませんので、一般株主の方向を向いた経営を推進して頂ける見込みは低いでしょう。
同社の経営陣には「自社がちょっと変な会社である」ということを自覚していただき、例えば、取締役の自社株保有の推奨(SOでなく身銭で買う)、従業員持ち株会の導入等、少数株主が無視されない企業に変身して貰いたいところです。
あるいは、ストラテジック・キャピタルのように、物言う株主が登場することを期待ですかね。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
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