外国株投資と為替と購買力平価説

本日付の日本経済新聞に「高金利外債に潜むリスク 長期で為替差損の傾向」という記事が載っていました。

記事の冒頭では、高金利のトルコリラ債を購入した投資家が、リラ相場の下落で含み損を抱えた事例が紹介されます。
そのうえで、この「高金利通貨の為替レートが下落した」という事象が「購買力平価説」という考え方で説明されます。

以下、記事より抜粋

金利が高い国の通貨や資産に投資すれば有利だと考えがちだが、必ずしもそうではない。高金利の国では通常、物価上昇率(インフレ率)も高い。物価が上がれば通貨1単位で買えるモノの量は減る。「購買力が低下すると、他通貨に交換する際の為替レートも長期的に下落しやすい」(龍谷大学の竹中正治教授)
2つの国の物価を参考に妥当な為替レートの水準を測る考え方を「購買力平価説」という。基準となる時期を決め、それ以降の2国間のインフレ率格差を反映して理論値を計算する。
図Aで、購買力平価説によるトルコリラの理論値をみると、対円で長期的に下落しているのがわかる。同国で高インフレ、日本でデフレ傾向が長く続いてきたためだ。


理論値にさや寄せされるようにトルコリラの実際の為替相場は下落基調が続く。購買力低下を反映した動きなので、トルコリラが例えば「5年前の半値になったから今は買い時」などとは言い切れないのだ。

通貨の役割は、交換の手段であり、また、価値を保蔵するものです。
もし通貨に本質的な価値があるとすれば、それは「1単位当たりでどれだけの物やサービスと交換できるか」であると言えるでしょう。

一方で、インフレ(物価の上昇)とは、通貨価値の下落の裏返しです。

通貨の本質的価値が下落すれば、他の通貨との交換レート(為替)も下落する、と考えるのが購買力平価説というわけです。

(もちろん、為替レートの決定要因は色々とあり、その国の経常収支(経常黒字国の通貨は上昇しやすい)や投資要因(高金利通貨は短期には上昇しやすい)も影響します。)

外国株投資と為替の変動

この購買力平価説の考え方は、外国株に投資をする場合にも応用できると考えています。

昨今は米国株投資がブームのようになっており、JNJ、P&G、コカコーラといった連続増配株やFANGのような大型グロース株等が人気を集めています。
ただし、米国株は当然ドル建ての資産であり、日本国内の投資家が得られるトータルリターンは、為替レート調整後の数値となります。

日本の投資家がドル建て資産に投資をした場合、購買力平価説に従えばどの程度の為替差損が見込まれるのでしょうか。

日米インフレ率の差異

以下のグラフは、世界経済のネタ帳から抜粋した日米両国の1980年以降のインフレ率の推移グラフです。
出典:世界経済のネタ帳
これを見ると、米国のインフレ率は、過去39年間のうち38年間で日本のインフレ率を上回っていることが見て取れます。
米ドルの方が日本円よりもインフレ率が高い、すなわち購買力平価説に従えば、通貨の本質的価値の下落率が大きいということです。

直近3年間(2016~2018推計)を見た場合、日本のインフレ率は0.52%/年、米国のインフレ率は1.94%/年となっており、米国が+1.4%ほど上回っている状況です。

為替損益を加味した外国株投資の優位性

以上をふまえると、同じ期待リターンの日本株と米国株があった場合、米国株は理論上▲1.4%/年の為替差損が出ると見込まれ、日本株を選定するのが合理的な判断となります。

逆に米国株を選定する場合、日本株よりも+1.4%/年ほど期待値が高い必要があります。

■ ■

僕は外国株への投資が少なく、日本株中心のPFを組んでいます。

外国株は情報量が少なく、母国語の投資家に対して優位に立てないだろうと判断しているのもありますが、購買力平価説によれば通貨の減価が予測されることも理由の一つです。

また、日本株でも円安メリットより円高メリット銘柄を多く保有していますが、これも現在の円安はいずれ逆回転するだろうと予測しているからだったりします。

まぁ、ここ数年はこの相場観でリターンを押し下げているのですが…(白目)

こういった考え方の投資家もいるんだな、と頭の片隅に置いて頂ければ幸いです。

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