【銘柄分析】サンエー(2659)|沖縄県最大手の総合小売業《後編:財務分析》

沖縄県の総合小売業であるサンエー(2659)の銘柄分析(後編)となります。
前回はこちら。


2.財務分析

(1)財務数値

まず、サンエーの過去の業績推移を確認します。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。

売上高、利益ともに増加傾向にあり、配当は15期連続で増配(株式分割を調整)しています。
敢えてケチを付けるのであれば、自己資本が充実するとともにROEの水準が切り下がっていることですが、現在でも10%前後はあるため優良企業と言ってよいはずです。

(2)収益性

①定性分析

「ドミナント戦略」とは、ある地域に集中的に出店することを通じて、物流費や採用費、広告費用を抑制する小売業の王道戦略です。
サンエーも沖縄県内に店舗網を集中する「ドミナント戦略」を採用しています。

その他、同社の場合は、数値に基づいたローコストオペレーションと地域に根差した品ぞろえの豊富さも強みとしています。消費者側にも、心情的な「地元びいき」があることでしょう。
これらの要素が相まって、小売業としては高い競争力を有していると考えられます。

また、同社が事業を展開する沖縄県は、本土とは海で隔てられた立地です。
このため本土企業が沖縄県で事業展開をする場合、他県の物流センターや工場を使用することが出来ず、県内に新たに拠点を設けなければなりません。

このため、採算性や投資回収期間を考慮すると、沖縄進出を控えるような企業も出てきます。(例えば、セブンイレブンは2019年1月時点で沖縄県のみ未進出です。)

「地の利」があり、相対的に競争圧力の小さい地域であるとも言えそうです。

②経済上の堀

過去の業績推移および上記の定性分析から、同社の事業は、バフェットが重視する経済上の堀(Economic Moat)も有していると考えられます。

③評価

・収益力の高さ  〇 
・業績の安定性  ◎
・経済上の堀   有(狭)

(3)成長性

①分析

沖縄県は、現在でも人口の増加が続いている都道府県であり、人口増による購買力の増大が見込めます。また観光客、特に国外からの観光客が増加傾向にあり、インバウンド消費の恩恵も受けられそうです。

この中で新規出店を進めていくことで、一定の成長は確保できると思います。


現在サンエーが最も力を入れているのが、2019年夏の開業を目指す「サンエー浦添西海岸PARCO CITY」計画です。

(株)パルコとの合弁(サンエーの出資比率51%)により沖縄最大の商業施設の建設を進めており、完成時の店舗面積は60,000㎡とサンエーの既存店で最大の「那覇メインパレス」の約1.6倍になります。

立地は那覇空港および大型客船パースに近く、地元の消費者だけでなく国内外の観光客需要も狙ったものです。

投資予定金額は400億円!、まさに社運を賭けた大プロジェクトという感じです。


②評価

・ 成長力 〇
・ 今後の成長余地 〇

現時点のPERは13.45倍、PBRは1.18倍となっており、そこまで割高感のある株価ではなく、投資妙味はあるように思えますが、いかがでしょうか

3.まとめ

最後に、少しサンエーの将来について考えてみたいと思います。

いわゆる小売業は、定期的に勢いのある業態が入れ替わってきた歴史があります。百貨店、総合スーパー(GMS)、ショッピングモールや専門店、そして「ネット通販」へ。

米国では、Amazonの勢いにリアルな小売店が翻弄され、玩具小売の最大手「トイザらス」が倒産するといった影響も出て来ています。
沖縄県は、離島という地理的条件もあり、今は配送費用や配送期間が本土より悪く、ネット通販の脅威はそれほどではないと言えます。

しかし将来的には、沖縄でもネット通販にリアル店舗が脅かされる可能性があります。

その時までに、例えば、サンエーが各地に持つ店舗を拠点にした宅配等、ネット通販に対抗できる「堀」を築けるかどうか。

10年・20年先を見据えた場合の課題であるように思います。


本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。


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