【銘柄分析】サンエー(2659)|沖縄県最大手の総合小売業《前編:企業概要》

こんにちは。相場の養分かもねぎ@kamonegi_kabuです。

今回は、保有銘柄の紹介と情報の整理を目的として、サンエー(2659)の銘柄分析を行いたいと思います。


小売業(スーパー)は、イオンやヨーカ堂のように全国展開するチェーン店がある一方で、各地に根差したローカルチェーンも多数存在します。

サンエーは、そのようなローカルチェーンの一つとして、沖縄県内では抜群の知名度を誇る企業です。

沖縄県に本社を置く企業といえば、沖縄電力やオリオンビール、沖縄セルラー電話など様々な企業が存在しますが、その中で最も売上高の大きな企業は、このサンエー!!なのです。(出典:沖縄タイムズ記事

なお、本記事は前後編となっており、前編では沿革や事業内容を中心にまとめています。

同社を理解するために大事だと思う点を記載してますが、長文です。
時間がない人、投資対象としての可否を手っ取り早くみたい人は、後編からどうぞ

目次
1.企業概要
 (1)沿革
 (2)事業内容と特徴 ←前編はここまで

2.財務分析
 (1)財務数値
 (2)収益性
 (3)成長性
3.まとめ

1.企業概要

(1)沿革

サンエーの創業の地は沖縄県の宮古島。本土復帰前の1950年に、創業者の折田喜作氏が開業した雑貨店から始まりました。

本土復帰が決定した1970年に衣料品店で沖縄本島へ進出。
当時の沖縄商工界では、本土復帰後における県外企業の沖縄進出が危惧されており、琉球政府は、県内企業に対して県外企業の資本・技術提携を促していました。

そんな中でも、創業者の折田氏は、

「競争が激しくなるというマイナス面があっても、日本本土との通関手続きが不要となるプラス面を評価しよう」
「安易に本土企業に頼ることなく、沖縄の消費者に必要なものは沖縄の企業が提供しよう」

という考え方を取り、独立企業として事業展開を図ることとしました。
この創業者の考え方は、現在もサンエーの企業理念である「善の発想」「自主独立」として残っています。

1975年には、日本最大の小売業(当時)であったダイエーが那覇市中心部に巨大店を出店。
経営資源が圧倒的に豊富なダイエーと同じ商圏で競争しても勝算は薄いということで、最初はコストの安い郊外(コザ、浦添、名護、具志川といった地域)での出店を重ねていきました。

その後、1977年から衣料品に続く第二の柱として食料品の取り扱いも開始。しばらくは伸び悩みましたが、生鮮食品の加工機能を持つ流通センターを設けることで課題を解決し、利益の柱となっていきました。

また、大手量販店との間のバイイングパワーを埋めるため、共同仕入れ機構である「ニチリュウ」に加盟したのもこの頃のことです。

また、1990年以降になると、小売業ではスーパー以外の業態(専門店やコンビニ)の興隆が目立ってきますが、サンエーは、エディオン(家電量販、1995年)、マツモトキヨシ(ドラッグストア、2006年)、ローソン(コンビニ、2009年)とフランチャイズ契約や合弁会社の設立を行い、業態を拡大してきています。

(2)事業内容と特徴

①出店戦略

まず、以下の表は、沖縄県内の主要な小売業者の事業範囲をまとめたものです。

サンエーは、総合スーパー(GMS)から食品スーパー、コンビニエンスストア等と、最も広い業態で事業を展開していることが分かります。


サンエーの出店戦略および店舗の特徴としては、以下の3点が挙げられます。

・大規模店と小規模食品スーパーを組み合わせた出店
・フランチャイズ、提携による専門店の展開
・品揃え・品質に対する評価が高い

●大規模店と小規模食品スーパーを組み合わせた出店

サンエーのGMS・食品スーパーは、次の3業態に分かれます。

・広域型GMS
・近隣型ショッピングセンター
・小型食品館(食用品と日用品)

同社は、ワンストップショッピングができる大型店と、食用品と日用品を扱う小型食品館をバランスよく沖縄県内に配置しています。

サンエーの競合相手として長年脅威であったのは、資本力や規模を武器に進出してくる本土の大手GMS(ダイエーやイオン)でした。
このような企業は大型店中心であり、小型店を出店することはまずありません。このため、サンエーの店舗網は、より消費者のニーズをくみ上げやすい配置となっており、大手GMSに対抗できてきたと考えられます。

●フランチャイズ・提携による専門店の展開

サンエーの競合となる小売業としては、大手GMSだけでなく、ドラッグストアやコンビニエンスストア、その他専門店等も存在します。

同社は、これらの企業が県内進出を図る際、先んじてフランチャイズに加盟(マツモトキヨシ、エディオン)したり、あるいは資本関係を持って共同で事業を展開する(子会社:ローソン沖縄)という戦略を取っています。

●品揃え・品質についての評価が高い

県内のスーパーに関する口コミを調べると、サンエーについて最も多いのが、「品揃え・品質は県内で一番良い」という声です。

一つ例を挙げると、沖縄県で多く消費される食材のひとつに「豆腐(島豆腐)」がありますが、わずか数キロ離れた地域でも味の好みが異なる場合があるため、同社は店舗ごとに仕入先を代えているとのことでした。

このような対応が、「品揃え・品質が良い」という評判に繋がっているのだと思います。本社が一括して品揃えを決めるチェーンではマネが出来ません。。

②運営面

●物流センターの設置による効率化

離島という地理条件から避けられない課題として、店舗への物流コストの増大、生鮮品の品質確保という点があります。
サンエーでは、宜野湾市に生鮮加工機能を持つ流通センターを保有しており、物流コストの削減とともに、付加価値のアップ(品質の向上、流通加工)も図っています。

●数値に基づいた経営とローコストオペレーション

創業者の折田喜作氏が「数値重視の経営」を標榜していたことで、同社にはその文化が根付いています。

二つほど例を挙げると、サンエーでは、1990年代から月次決算の数値が「翌月2日」には出来上がり、翌3日には分析・対応策の検討を行い、全社方針が打ち出されていたのだそうです。(僕も本職では経理財務を担当していますが、このスピード感はすごいと思います。)

また、これは2004年1月の「商工ジャーナル」内の代表取締役社長である上路氏のインタビューからの抜粋ですが
ローコストオペレーションで知られるウォルマートの売上に占める本社経費は2%と聞きますが、当社のそれは1.9%です。

とのことであり、小さな本社、効率的な間接部門という風土が根付いている証拠かと思います。

さて、ここまでサンエーの企業の概要を見てきました。
後編では、投資対象としてのサンエーを検討していきたいと思います。


(参考書籍)
・『広島経済大学経済研究論集 第39巻第3・4号 2016年12月』
 「沖縄における小売業の生成・発展─サンエーの事例を中心として」山内 昌斗
・『商工ジャーナル2004・1』「実力企業強さの秘密(前編)」
・『商工ジャーナル2004・2』「実力企業強さの秘密(後編)」

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