【銘柄分析】中央自動車工業(8117)|コーティング剤を武器に高収益&安定成長

こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。

今回は、自動車用のコーティング剤、補修部品の輸出を手掛ける中央自動車工業(8117)の事業内容・財務状況を分析します。



目次
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ

1.中央自動車工業の事業内容

同社の事業は、大きく「国内自動車用品ビジネス」と「海外自動車部品ビジネス」に分かれます。過去には携帯電話の販売店も運営していましたが、撤退済です。

前期の売上の内訳を見ると、国内部門が112億円、海外部門が88億円となります。

事業別売上推移

(1)国内自動車用品

国内自動車用品ビジネスは、売上高112億円と全社の55%を占めています。
本事業はカーディーラーを通じて販売・施工する「CPC」シリーズのコーティング剤が主体となっています。

CPCコーティング剤とは、米CPC社が1980年代に開発したもので、日本では中央自動車工業が独占販売権を持っていました。2014年には、CPC社から「日本国内における製造権・販売権・商標権等一式」を購入し、自社で製造も行っています。

以下は、同社がyoutubeに上げている紹介動画となります。

ボディーコーティング剤


ガラスコーティング剤


中央自動車工業のコーティング剤は、新車販売時のオプションとして、トヨタ系、日産系、ホンダ系等のカーディーラーで幅広く施工されています。

ディーラーの事業環境は厳しく、新車販売の利益だけでなく、付加価値サービスも取り込んでいかないと事業が成り立ちません。
ディーラーと同社はガッチリとタッグを組んでいるようです。


消費者側から見たメリットとしては、車に汚れが付きにくくなり、車のお手入れが楽になるという点が挙げられます。

同社製品サイトから抜粋
ただ、実際のネット上の評判としては、

「効果はあるけど全くキズや汚れが付かないわけじゃない」
「5年間保証というのは、1年に一度メンテナンスを受けた場合だけ」

といった意見が多く、効果はまぁソコソコ、という感じのようでした。


ちなみに、このCPCペイントシーラント、平成17年頃に自動車用ワックスの販売会社から「誇大広告だ」と訴訟を受けたことがあります。
ワックス会社とすれば「ワックス不要」となれば商売あがったりですし、中央自動車工業側の宣伝もやや大げさで脇が甘いところもありました。

結果としては最高裁で中央自動車工業が勝訴。

H17.8.10知財高裁 平成17(ネ)10029等 不正競争民事訴訟事件

そして、この判例文を見ると、同社のコーティング剤ビジネスの規模を読み解くことができます。
原判決は(中略)1本当たり の販売利益を2000円として(中略)被告商品の施工台数は年間平均42万台以上であり,被告商品の販売本数も,年間平均42万本以上である。
当時のコーティング剤の施工台数は年42万台ほど、1本あたりの利益は約2,000円であり、中央自動車工業の利益は年8億円(42万台×2千円)とかなりの高収益であったことが分かります。

現在では、製品は自社製造、ロイヤリティも不要となりますので、利益率はもっと上がっているでしょう。

(2)海外自動車部品

海外ビジネスは売上88億円と全社の45%を占めています。
本事業では主に自動車の補修部品を輸出販売しています。取扱メーカーで言えば、アイシン精機、椿本チエイン、TPR等が中心です。

補修部品の販売は比較的安定したビジネスですが、あまり高収益というわけではありません。同業他社ではSPK(7466)が上場していますが、同社の決算を見ると売上高営業利益率は4~5%ほどです。

利益率が同程度とすれば、中央自動車工業の海外自動車部品ビジネスの利益はせいぜい年3~4億円でしょう。売上高はともかく、利益面での寄与は少ないハズです。

2.中央自動車工業の財務状況

(1)財務数値

まず、中央自動車工業の過去の業績推移を確認します。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標の推移」を拾いました。


利益は15年で5.9倍、配当は4.1倍に伸ばしています
かなりの優良企業という印象ですね。

売上はこの期間トータルで見ると横ばいですが、2012年頃の減収は携帯販売店からの撤退が要因であり、特にマイナス要素ではありません。
2002~2005年頃の減収要因は分かりませんでしたが、利益は落ち込んでいませんので、採算性の低い取引から手を引いたのではないかと推測します。

(2)収益性

①定性分析

中央自動車工業の利益の大半は、国内自動車用品、特にCPCシリーズのコーティング剤が稼いでいると考えられます。この製品は、中央自動車工業が国内における独占販売権を持っており、他社が扱うことはできません。

しかし、コーティング剤には競合商品も多数ありますし、CPCシリーズに他社を寄せ付けない圧倒的な商品力があるとは言えなそうです。
Keeper技研(6036)のように別チャネルでサービスを提供する企業も出て来ています。競争環境は厳しそうです。

そんな中で中央自動車工業が持つ強みは、販売ネットワーク、すなわち全国各地のディーラーと協力して、自社製品を提案する体制にあると思います。

ディーラーは消費者が新車を買う際の入口部分ですので、ここの部分をしっかり押さえている点は、中央自動車工業の強みであると思います。

②経済上の堀(Economic Moat)

同社の競争優位性は判断が難しいのですが…、「コーティング剤の独占販売権」と「全国のディーラーを通じた販売ネットワーク」の合わせ技で「無形資産」という経済上の堀(Economic Moat)があるのではないでしょうか。(多少は)

③評価

・収益力の高さ  〇
・業績の安定性  〇
・経済上の堀   有(狭)

(3)成長性

足元の業績は堅調であり、向こう数年は安定的な成長が継続するでしょう。その先は、コーティング剤の機能向上・競争力維持を図りつつ、新たな製品を上市できるか次第です。

近年であれば、アルコール検知器、自動車ガラス向けコーティング剤、太陽光パネル向けコーティング剤、オイル添加剤(商標権の取得)といった形でラインナップを拡大しています。

分野としては、「コーティング」という要素技術、あるいは「ディーラーという販売網」を生かせるジャンルが有望なのではないでしょうか。昨年度に新設した研究開発施設「中ノ島R&Dセンター」の奮闘を期待します。

3.まとめ

最後に、現時点(2019/1/19)の中央自動車工業の株価指標を確認します。

・予想PER    9.0倍
・実績PBR    1.14倍
・予想配当利回り 2.93%

株価が割安であることは間違いありません。事業内容が分かり難い点、成長性がはっきりしない点でこういった評価になっているのでしょう。

なお、投資は自己判断でお願いいたします。


本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。

2 件のコメント :

  1. かもねぎさん、こんにちは。
    2002~2005年頃の減収要因は、たしか他社開発品卸から利幅の大きい自社開発品卸に
    扱いの重点をシフトしたからだったと思います。
    15年も前なので、うろ覚えですが・・・

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    1. 冬葉さん、こんにちは。
      ブログちょこちょこ拝見させていただいています。

      情報ありがとうございます。ニュース記事が少ない企業なうえ、
      当時の有価証券報告書も残ってないため、推測するしかありませんでした。
      15年くらい前から、着々と自社開発品にシフトしていってたんですね。

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