【銘柄分析】東京汽船(9193)|曳船大手でコテコテの資産バリュー株

こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。

今回は曳船大手である東京汽船(9193)の銘柄分析を行いたいと思います。

ちなみに、皆さまは「曳船」という船をご存じでしょうか?

そこら辺の解説も含めてお話しさせていただきますね。

目次
1.企業概要
(1)曳船について
(2)事業内容

2.財務分析
(1)収益面
(2)資産面

3.まとめ

1.企業概要

(1)曳船(えいせん)について

まず、東京汽船の説明に入る前に、曳船がどういったものかご紹介します。(ご存じの方は読み飛ばしてください)

曳船とは、港湾内などの狭いエリアで細かく自由に動くことができない大型船を牽引・押すことで、安全に離着岸ができるようにする特殊船です。
別名「タグボート」とも言います。

左手手前の船が曳船
曳船(タグボート)は大型船を押す・引くという作業に従事する小さな力持ちです。出力は3,000馬力、4,000馬力以上、1総トン当たりの馬力は一般貨物船の30~40倍ほどになると言われています。

曳船市場は、国内では1,000億円前後です。その特徴は「①港湾ごとに運営形態が違う」「②完全な自由競争市場があまり存在しない」という点にあります。

①港湾毎の運営形態が違う

曳船事業は港湾管理の一環として「官」が運営することもあれば、民間企業が運営することもあります。

日本の主要港で言えば、名古屋港、大阪港では港湾管理組合が一元管理、神戸港や博多港では民間任意団体のタグ協会が一元管理、瀬戸内海では民間企業による自由競争…といった形です。

東京汽船が事業を展開する東京湾(横浜、川崎、東京、千葉)でいうと、横浜港・川崎港では「横浜川崎曳船」という特殊法人が一元管理を、東京港では「東京タグセンター」という官寄りの組織が運営をしているようです。

②完全な自由競争があまり存在しない

曳船は、安定的なサービス提供と港の安全の確保が重要とみなされるため、官の影響が強くなっています。
また、曳船事業者同士で協定・協力(船の賃貸等)が不可欠であるため、新規参入や過度な競争が起きにくい市場構造となっているようです。

(2)事業内容

さて、曳船(タグボート)のついて理解を深めたところで、次に東京汽船の事業内容に触れたいと思います。

東京汽船の事業内容は以下に区分されます。

①曳船事業
②旅客船事業
③売店・食堂事業

①曳船事業

利益の大半を占める主要事業です。営業エリアは東京湾であり、船隊数は子会社を含め30隻と地域で最大規模となっている模様です。

その他、特筆すべき事項としては、持分法関連会社に香港で曳船事業を運営するSOUTH CHINA TOWING CO.LTDという企業がおり、同社は香港における曳船事業者3強の一角に食い込んでいることです。
下記の表は、国交省が公表している世界の港湾別のコンテナ取扱量ランキングなのですが、香港は世界5位となり、日本の東京港・横浜港の合算と比べて2.6倍の扱い量を誇るメガターミナルです。

香港の曳船事業は、東京汽船の決算では営業外の持分損益に反映されます。2018年3月期決算で言えば当期利益の約4割がこの持分利益となっています。
(※持分法による投資利益÷親会社に帰属する当期純利益で計算)

②旅客船事業

横浜港における観光船、久里浜・金谷を結ぶカーフェリーの運営を行っています。
売上は全社の2割ほどを占めていますが、利益貢献はほとんどありません。

③売店事業

旅客船に付随する売店や食堂の運営を行っています。売上・利益ともに軽微です。

2.財務分析

(1)収益面

まず、東京汽船の過去の業績推移を確認します。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。

売上高は頭打ちで縮小傾向にあります。
利益は景気変動に左右されますが、海運セクターの中では不況時も比較的安定している方かと思います。

成長を見込める企業ではありませんし、景気変動も受ける業態のため、一定期間を均した利益水準で割安度を確認します。
過去10年間の平均EPS(一株利益)は71.7円/株となり、現時点の株価は742円(1/4時点)をふまえるとPERは10.3倍程度となります。

極端に格安とは言えませんが、比較的割安ではないでしょうか。

(2)資産面

ここでは、ベンジャミン・グレアムの提唱した「正味流動資産価値」を見ます。

東京汽船の前期決算における正味流動資産は80億円(流動資産144億円-総負債63億円)となり、東京汽船の時価総額(74億円・1/4時点)を上回ります。

このほか、固定資産の部に投資有価証券18億円(京急電鉄やみずほFG等)を保有していますので、資産価値から見て割安感があります。

俗にいう「ネットネット株」にかなり近い水準と言えます。

3.まとめ

以上で東京汽船の銘柄分析は終了となります。
同社は国内外の曳船事業で一定のプレゼンスを持っており、資産価値から見ても割安感がありますので、長期で見れば損をする可能性は低い銘柄と思います。

ただ、市場平均を超えるリターンを得るという観点からいうと、もう少し安値で購入するか、あるいは何らかのイベント(例えば親会社である商船三井のTOB)が無いと難しいかな、という印象です。

投資は自己責任でお願いいたします。

(参考書籍)
・『流通科学大学論集─流通・経営編─第21巻第2号』
 「台湾曳船事業民営化と日本の曳船事業のあり方に関する考察」森 隆行


本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。

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