【読書メモ】破天荒な経営者たち

『破天荒な経営者たち』という書籍を読みましたが、なかなか面白かったです。

本書は、長期間に渡って優れた株主リターンをもたらした8社/8人の経営者に注目し、彼らに共通する特徴をまとめたものです。
投資家にとっては、優れた投資先の選定や、投資にあたっての心構えに関して学びがある内容でした。


目次
1.本書で紹介される企業

2.優れた経営者に共通する資質

3.まとめ


1.本書で紹介される企業

原書は米国で出版されており、投資家にとっては知名度の高いバークシャー・ハサウェイを含めて8社の米国企業が紹介されています。

以下に簡単な概要を記載させていただきます。

(1) キャピタル・シティーズとトム・マーフィー

1966年から1995年までキャピタル・シティーズを経営。
地方でいくつかのテレビ局・ラジオ局を運営していたキャピタル・シティーズを、全米トップクラスのメディア複合企業に育て上げた。
任期中の株主リターンは年率19.9%であり、同時期のS&P500(年率10.1%)や主要メディア企業(年率13.2%)を大きく上回る。

(2) テレダインとヘンリー・シングルトン

1961年から1991年まで複合企業テレダインを経営。
小規模な電子機器製造会社であったテレダインを、1960年代における積極的な買収と、1970~80年代前半の大規模な自社株買い、1980年代後半からのスピンオフの活用により大きく変貌させる。
任期中の株主リターンは年率20.4%であり、同時期のS&P500(年率8.0%)、主要な複合企業(11.6%)を大きく上回る。

(3) ゼネラル・ダイナミクスとビル・アンダース

1991年に大手軍事企業ゼネラル・ダイナミクスのトップに就任。
冷戦終結に伴う構造不況に襲われる大手軍事企業を、既存ビジネスの収益性強化および売却と、そこで得られた資金による自社株買いと軍事関連企業の買収に活用。
アンダースおよび後継者がCEOを務めた期間(1991年から2008年)、株主リターンは年率23.3%であり、同時期のS&P500(年率8.9%)および同業他社(17.6%)を大きく上回る。

(4) テレコミュニケーションズとジョン・マローン

1973年から1998年までケーブルテレビ企業テレコミュニケーションズを経営。
多額の負債で破錠寸前だったテレコミュニケーションズを、筋肉質な企業体質の構築と同業他社の積極的な買収により大きく成長させる。
任期中の株主リターンは年率30.3%であり、同時期のS&P500(年率14.3%)、上場ケーブル会社(20.4%)を大きく上回る。

(5) ワシントンポストとキャサリン・グレアム

1963年から1993年まで大手新聞社ワシントンポストを経営
ストライキやウォーターゲート事件等で混乱する同社だったが、ライバルの撤退によって利益率が向上するとともに、規律のある投資・多角化と自社株買いにより大きく成長させる。
1971年の株式公開から1993年の退任までの株主リターンは年率22.3%であり、S&P500(年率7.4%)および同業他社(年率12.4%)を大きく上回る。

(6) ラルストン・ピュリーナとビル・スティーリッツ

1980年から2001年まで家畜飼料・消費財企業ラルストン・ピュリーナを経営。
長い歴史を持つ家畜飼料会社であったラルストンを、ペットフード・お菓子・電池といったブランド力を持つ消費財メーカーに転換させるとともに、主力企業のスピンオフも活用し、大きく成長させる。
任期中の株主リターンは年率20.0%であり、S&P500(年率14.7%)および同業他社(年率17.7%)を大きく上回る。

(7) ゼネラル・シネマとディック・スミス

1961年から2006年まで、映画館運営・複合企業のゼネラルシネマを経営。
平凡な映画館運営チェーンであったゼネラル・シネマを、成熟した映画館事業から得られたキャッシュフローを自社株買いや多角化に投下するとともに、適切な時期に事業売却を行うことで、大きく変貌させる。
任期中の株主リターンは年率16.1%であり、S&P500(9.0%)を大きく上回る。

(8) バークシャーハサウェイとウォーレン・バフェット

みんな知ってるバフェ様。
1965年から2011年までの株主リターンは年率20.7%とS&P500(年率9.3%)を大きく上回る。



以上の通り、各社とも長期的なリターンが市場平均や同業他社を大きく上回っていることが見て取れます。

次項では、これらの経営者に共通する特徴を見てみます。

2.優れた経営者に共通する資質

経営者の仕事というのは、大きく言えば「業務の執行」「資本の配分」「金融機関や業界関係者とのお付き合い」の3つに分けられます。

一般的な経営者は、営業・研究・コストダウン活動といった「業務執行」、あるいは「金融機関や業界関係者とのお付き合い」にリソースを投下します。
その目的も、株主リターンというよりは、企業の規模拡大や自身の名声獲得に力点が置かれがちです。

一方で、本書で紹介される経営者は「資本の配分」にリソースを投下します。
資本の配分とは、どのようにお金を調達し、それをどこに投資をするか、という大局的な判断のことです。優れた経営者は、設備投資や買収を行う際、自社が期待するリターンを得られるか厳しく査定し、期待リターンを満たさないのであれば無理をしません。また、自社株が設備投資や買収よりもリターンが大きければ、積極的に自社株買いも実施する傾向があります。

業務の執行も重要ではあるものの、傾向としては優れた部下に任せる(権限移譲する)人が多かったようです。

また、ウォール街やマスコミ、業界団体との付き合いは極力避ける人が大半です。

3.まとめ

資本を儲かる分野に投資すること

一言で書くと大変単純ですが、株主に優れたリターンをもたらす経営者は、周囲の雰囲気に惑わされることない優れた資本配分能力を持っています。

期待リターンを適切に算出し、勝率の高い分野に資金を投入すること、基準を満たす投資先が無ければ「待つ」姿勢は、投資家も大いに学ぶべき点だと思います。


また、彼らはみな大規模な買収を成功させた実績を持っていますが、企業買収の成功率は20~40%程度と言われ、本来は難易度の高い経営戦略です。本書の企業は、適切な価格で買収することは勿論のこと、買収後に収益力を改善する仕組みにも強みを持っていました。
例えば、キャピタルシティーズやテレダイン、テレコミュニケーションズは、コスト競争力に優れた企業体質を持ち、買収後に収益力を大幅に改善させることで投資回収を図っていました。
(この辺り、日本企業でいえば永守氏率いる日本電産にも通じるところがありますね。)


時間をおいて定期的に見返すタイプの本かもしれません。


0 件のコメント :

コメントを投稿