バックミラーから見えるもの、見えないもの

こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。

車の運転も株式投資も、周囲の情報・データをしっかり見て、事故を起こさないように安全運転することが大事ですよね。


個別株投資では、企業の過去の業績がバックミラーのようなものだと思います。

ある経済状況の中でどのように事業を展開してきたか、利益率や成長率はどのように推移してきたか……過去の業績を見るとたくさんの情報を得ることができます。


とはいえ、株式市場において最も重要なのは企業の将来です。

株価は将来の利益やキャシュフローを反映すると考えれば、将来の業績の方が大事です。

過去の業績をちゃんと調べることには、どれだけの意味があるのでしょうか?


【本記事のテーマ】
過去の業績から将来の収益力や成長力は予測できるのか?

収益力と成長力の持続可能性について

今回は、マッキンゼー・アンド・カンパニー著『企業価値経営ーコーポレート・ファイナンスの4つの原則』という書籍に記載されていました、企業の収益力と成長力の「持続可能性」に関する調査をご紹介します。

なお、調査は米国企業を対象としたものである点ご留意ください。

1.収益力の持続性

以下のグラフは、調査対象企業における1995年と2005年の「ROIC(投下資本利益率)」を比較したものです。縦軸が95年、横軸が05年を表わしており、10年間で企業の収益力がどのように変化したかを追うことができます。

出典:「企業価値経営」P142

このグラフからは、企業の収益力は時間の経過によっても比較的変化しにくい、ということが言えます。

95年時点でROICが20%を超えていた高収益企業群(縦軸の一番下)を見ると、その7割(67%)は10年後(05年)にも20%以上のROIC(横軸の右側)を維持していました。

逆に、95年時点でROICが10%を下回る低収益企業(縦軸の上段)を見ると、その57%は、10年後にも低い収益性(横軸の左側)に甘んじていました。

2.成長力の持続性

同じように企業の成長率の趨勢を比較したグラフも見てみます。

こちらは、1994~97年における年複利成長率(縦軸)と2004~07年における年複利成長率(横軸)を比較したものです。

出典:企業価値経営P156
このグラフからは、ある企業が高成長を維持するのは難しい、という事実が読み取れます。

1994~97年の期間に年+15%を超える高成長を示した企業群(縦軸の一番下)をみると、10年後にも同じ水準の成長率を維持していたのは、全体の4分の1(25%)に過ぎませんでした。それどころか、約半数(44%)の企業は、年5%未満の低成長に落ち込んでいる始末です。

調査結果から言えること

上記の調査結果から言えることをまとめてみます。

(1)企業の収益力は持続しやすい

企業の収益力というのは、その業態やビジネスモデルに大きく左右されます。

多額の投資を必要とする業界は平均的に利益率が低くなりますし、ブランドや特許といった経済上の堀(Economic Moat)を有する企業であれば、激しい競争の中でも収益性を維持しやすいでしょう。

従って、これまで収益力の高かった企業は、(それを維持できる強みを有することが条件ですが)、今後も高い収益力を期待できると言えそうです。

逆に収益力の低い企業については、ビジネスモデルや主力製品・サービスの変更といった大きな変革を経なければ、大きく収益性を伸ばすことは難しいと言えそうです。

(2)企業の成長力は持続しにくい

これには二つ理由があります。

第一に、単純に企業の規模が大きくなるほど、成長率を維持するために必要な金額が大きくなる点です。

売上高10億円の企業であれば、1.5億円増収すれば15%の成長率となりますが、売上高1兆円の企業の場合、1,500億円の増収が必要であり、成長のハードルが高くなるのです。


二つ目の理由として、商品ライフサイクルの問題があります。
ある製品が普及する段階では市場規模が大きく拡大しますが、製品が市場へ十分に浸透した後は、成長率の鈍化した成熟市場となってしまいます。

市場の成長に乗って急拡大した企業が、主力製品の市場が成熟した後でも高成長を維持するためには、継続的に新市場(製品・地域等)を求めていく必要があり、成長に必要なハードルが高くなってしまいます。

結びに

現在の収益性を維持できるか、という観点であれば、過去の業績を見ることには大いに意味があると思います。

一方、企業の成長性にお金を投じるのであれば、「過去に高成長であった」という事実に惑わされないことが重要ではないでしょうか。


…と、偉そうに書いてみたところで、ここ数年ほど高成長だったものの、利益成長が落ち込んだのを契機に急落した銘柄を購入し、絶賛含み損になっていることを思い出しました。

@900円くらいで買ってます

お前ができとらんやん?

戒めとして書きました(白目)

(参考文献)

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