【銘柄分析】新晃工業(6458)|セントラル空調機器のトップ企業

こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。

今回は業務用空調器メーカーである新晃工業(6458)を分析したいと思います。

同社はかもねぎファンドの組み入れ銘柄の一角ですが、年初から株式市場全体が上昇する中でゴリゴリ安値を更新しており、「大丈夫なのか…何か悪材料があるのか…」と不安に駆られて詳細分析に乗り出しました。

持ち株バイアスがかかってると思いますので、そこは割り引いて読んでください。

目次
1.新晃工業の事業内容

2.財務分析
(1)財務数値
(2)収益性
(3)成長性

3.まとめ

1.新晃工業の事業内容

新晃工業の主力製品は「セントラル空調機器」という製品であり、国内シェア40%を有するトップ企業となります。

出典:新晃工業ホームページ

…と言いましても、すごいのかどうかがイマイチ分からないと思いますので、補足説明をさせて頂きます。


業務用の空調システムは、ざっくり言うと①業務用エアコン②セントラル空調の二方式に分かれるようです。

①業務用エアコン

家庭用のエアコンと同様に室外機と室内機から構成されるもので、小~中規模な物件での採用が多くなります。

ダイキン工業HPより

部屋ごとに空調を制御できる点、施工が容易な点が評価され、近年はオフィスビルやホテル等でも採用が増えてきました。
ビル用マルチという、1台の室外機で複数の室内機を運転できるタイプが特にニーズを捉えているらしいです。

②セントラル空調

主に大規模空間(商業施設、ショッピングセンター)や空調管理の必要な場所(病院、工場、博物館)に設置されます。

ダイキン工業HPより

セントラル空調は、熱源システム(一次側)と空調システム(二次側)を組み合わせて作られます。

新晃工業が高いシェアを持つ「セントラル空調器」というのは、図の赤枠内である「二次側の空調機器」の分野です。
シェア4割はココの範囲

セントラル空調でシェア4割」と聞くとなんだか凄そうに聞こえますが、実態は有力なサプライヤーといった感じですね。


次に新晃工業の事業構成を見てみましょう。
以下は、新晃工業の有価証券報告書等を元に、かもねぎが作成した売上および利益をセグメント別に分解したグラフとなります


※ 国内保守メンテ部門の数値は、新晃アトモスの売上・経常損益を使用

※ 国内ビル管理部門の数値は、千代田ビル管財の売上・経常損益を使用



同社の販売する製品は、設置後も定期的な保守が必要となるため、子会社の新晃アトモス(株)を通じアフターサービスを提供しています。売上および利益の2割弱を占めます。

また、同社は2014年にビル管理会社を買収しており、これも安定収益源になっています。

その他、新晃工業は国内だけではなく中国を中心にアジア圏でも事業を展開、売上高の15%ほどが海外向けとなります。
現地では知名度も高く、数年前までは収益性も良かったのですが、近年は赤字気味と苦戦中です。

2.財務分析

(1)財務数値

まず、新晃工業の過去の業績推移を確認します。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。

2003年~2004年頃に、ホテル事業からの撤退といったリストラ策によって最終赤字となりました。

過去10年ほどは、景気変動の波は受けつつもまずまずの利益水準です。

(2)収益性

新晃工業の扱う製品は、製品納入後にも継続的な修理・保守が発生します。

顧客は製造したメーカーに修理や保守を発注することが多く、新品と比べて価格競争は激しくありません。
収益性を維持しやすく「乗り換えコスト」という経済上の堀(Economic Moat)を有していると考えられそうです。

とはいうものの、保守・メンテ部門の利益の割合はそこまで大きくなく、業績を牽引していくにはやや力不足な点が残念です。

(3)成長性

新晃工業の主力製品であるセントラル空調器市場を見ると、需要のピークは1990年代であり、現在の国内出荷台数はピーク比で▲7割と大幅に減少しています。

特にオフィスビル等のペリメータゾーン(窓際など)に設置する「ファンコイルユニット」という製品の落ち込みが急です。

日本空調冷凍工業会の自主統計より作成

これは、大型物件の新設着工が減っていることや、オフィスビルやホテル等で、空調としてセントラル空調でなく業務用エアコンを採用する建物が増加していることが影響しているようです。

縮小市場。事業環境はかなり厳しい印象を受けますね。


しかし、です。
業界紙に掲載された社長のインタビュー記事を見ると、足元の事業環境はむしろ大変好調なようです。

第3四半期以降はフル生産が続いています。工場では期初比約10%アップの生産能力を確保していましたが、それでも間に合わず、来期はさらにもう10%は上げる必要があると判断しています。大型建築物の空調は冷温水の中央熱源方式のウェートが高くなりますが、対応できるメーカーが以前と比べると当社と、あともう1社ほどという業界事情の中でご注文をいただき、かなりの受注残を抱えています。納期面でご迷惑をおかけすることのないように調整していきます。現在のような繁忙状況はバブル期以外では見られなかったことです。

出典:空調タイムス2019年1月1日号(新晃工業HPに掲載)


1点目のポイントは残存者利益です。

大型建築物向けの空調器では、対応できるメーカーが、新晃工業ともう1社ほどに集約されているようなのです。(記事内の下線部)

おそらく、市場が縮小する中でメーカーの撤退が続いた結果なのでしょう。パイは縮んだものの、逆に新晃工業はシェアを高めていると予想できます。


2点目のポイントはリニューアル需要です。

大型ビルの耐用年数は50~60年ほどと言われますが、この使用期間の中で空調設備は2~3回ほどの更新が必要となります。

同社IRサイトによれば、現在では案件数の55%がリニューアル需要のようです。

出典:新晃工業ホームページ

セントラル空調機器は、バブル期に需要の大・大・大ピークを迎えたわけですが、当時設置された設備の更新需要が、今後ジワジワと出続けることが予想されます。

つまり、出荷台数が更に落ち込むことはあまり考えにくく、むしろ寡占の進んだ市場で安定的に事業を展開できるような気がしますが、いかがでしょうか。

3.まとめ

最後に現時点(2019年2月)の新晃工業の株価指標を確認します。

・予想PER   :9.89倍
・実績PBR   :1.02倍
・予想配当利回り:2.7%
・株主優待   :100株で図書カード(1,000円分)

短期的に見るのであれば、十分な割安度があると思います。

長期目線であれば、新設物件への納入拡大や、海外事業の立て直し進むかが重要なポイントになるのではないでしょうか。

あとは、資本提携をしているダイキン工業からのTOBの可能性もあるんじゃないかなー…なんて妄想の捗る銘柄かもしれません。



本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。

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