【銘柄分析】ズーム(6694)|ニッチを攻める音響機器メーカー

こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。

2017年に上場した音響機器メーカーのズーム(6694)が、正味流動資産割安株となっていたので、事業内容を調査してみました。

目次
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ

1.ズームの事業内容

(1)事業概要

ズームは、現社長の飯島雅宏氏が1983年に設立した企業であり、大手の楽器メーカーが参入してこないようなニッチな音響機器を開発・販売しています。

まずは地域別の売上構成を確認してみます。
同社HPより
製品は世界100国以上に供給されており、日本国内の売上高はごくわずか、売上高の9割超が海外向けです。

北米市場ではギター用のエフェクターで高いシェアを有する等、ブランドは国内よりも海外で浸透しているようです。

次に製品別の売上構成を見ます。

ズーム2019年12月期決算説明資料より
ズームのターゲット顧客は、ミュージシャン・音楽制作者・カメラマン・音楽系ユーチューバー・音鉄等、世界中に一定数存在している「良い音」にこだわるニッチなユーザー層です。

例えば、上から2番目の「エフェクター」というのは、エレキギター等に取り付けて音響効果を与える機器のことで、1台で複数の音響効果を与えられるタイプを「マルチエフェクター」と言います。

ギター用はこんな感じ(youtubeへ)

ボーカル用もあります(youtubeへ)

エフェクター以外で売上の大きな割合を占めているのがレコーダー類です。


端的にはICレコーダーのようなものですが、ズームの製品は音質が良く、耐音圧性も高いプロ向け仕様となっており、例えばミュージシャンがライブハウスの演奏を録音する、youtuberが自分の演奏や歌声を録音する…といった用途に利用されているようです。

(2)特徴

①ニッチ市場

ズームは自社のターゲットを世界中の「良い音」にこだわるニッチなユーザーと定義しています。

このような音響機器に関するグローバル・ニッチ市場の規模は、同社が事業を展開するには十分である反面、大手企業では採算が取れず、参入が困難という側面があるようです。
従って、楽器・音響機器市場の中では比較的競争が緩いマーケットといえます。

②エンジニア×ミュージシャン

ズームは製品の生産をEMS企業に完全外注し、販売についても、各国の代理店を通して実施しています。
その代わりに、全社員の半数以上が開発業務に従事するエンジニアという「研究開発型企業」となっています。

また、同社のエンジニア採用基準も面白くて、「エレクトロニクスまたはソフトウェアを専攻したこと」と「楽器の演奏ができること」の2点が条件になっています。

つまり、社員の過半数以上が「楽器を演奏するエンジニア」なのです。

(余談ですが、社長の飯島雅宏氏も自身でギターを演奏する経営者です。)

③商品開発5ヶ条

また、製品の開発にあたって「商品開発5ヶ条」というルールが定められています。

中期経営計画資料より抜粋
ポイントとしては

1番目:「良い音」にこだわるユーザーを満足させる製品

3番目:ユーザーの立場に立った「こんな商品があったらいいな」をカタチにする

5番目:ユーザーに新しい体験を提供する「提案型商品」を開発し、新たな市場を創出する。

といったあたりでしょうか?

もし、大企業にならなかったソニーが存在するならば、こんな企業になるのかなと思いました。
良い意味で尖っている会社ですね~

2.ズームの財務状況

(1)財務数値

続いてズーム過去の業績推移を確認します。
数値は各年度の有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」を拾いました。

売上高については、7年間でおおよそ倍増しました。

「ハンディビデオレコーダー」、「マルチトラックレコーダー」、「プロフェッショナルフィールドレコーダー」といった新製品を投入したこと、2018年度にイタリアの販社を買収したことが寄与したようです。

一方で経常損益はこの期間に悪化しています。

要因ははっきり抑えられていないのですが、2012~2014年頃は円安進行による為替差益の計上が大きかったのではないかと推察します。

過去の決算説明資料を読むと、2016年4月からドル建資産とドル建負債をマッチングさせるヘッジ(いわゆる為替マリー)に取り組むようになったとのことで、それ以前は円高局面で四半期に1億円単位の為替差損を計上していました。
逆に、円安局面では為替差益を計上していたと推測されるからです。

(2)資産価値

収益面と合わせて資産価値も確認しましょう。
2019年12月期決算における正味流動資産価値見ると、36億円(流動資産65億円-総負債29億円)となっています。

一方で現在の時価総額は30億円(2020年2月時点)と、正味流動資産価値以下となっています。

(3)その他

2020年2月21日に「Zoom North America,LLC(持分法適用関連会社)の子会社化に関する基本合意書変更に関するお知らせ」を開示しました。

この会社は北米の販売代理店で、ズームの出資比率は従来33.3%でした。
これを本年5月を目途に100%子会社とする方向で合意したとの内容です。



ズームは毎期1.5億円ほどを持分法利益として安定的に計上していますので、100%子会社となれば2~3億円ほどの損益の押し上げ(のれん償却前)に繋がる計算です。

3.まとめ

最後に現時点(2020年2月)のズームの株価指標を確認します。

・予想PER    10.02倍
・実績PBR    0.62倍
・予想配当利回り 3.05%


業績に安定感は無さそうですが、事業内容は面白い会社なので、資産価値未満なら買っても良いかな、と思って少し拾っています。

ただ、観る側でライブくらいは行くものの、あんまり楽器周りのことは詳しくありませんので、業界事情とか製品の評判等を教えていただけるとありがたいです。


本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。

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