こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)です。
本職では経理マンを務めており、3月期決算が目前に迫った今、その準備に追われる日々を過ごしております。花粉と決算で地獄の時期がやってくる…(震)
さて、少し前のことですが、日経新聞にてリース会計の見直しに関する記事が掲載されていました。(リース取引を資産計上 会計基準変更、国際標準へ)
現在、日本の会計基準では「オペレーティングリース」という種類のリースは貸借対照表に計上する必要がない(簿外・オフバランス)のですが、これを資産・負債として計上すべく会計ルールの見直しが検討されているとの内容です。
しかし、専門外の方にとっては、「オペレーティングリースがオンバランス化される」と言われても、あまりピンと来ないのではないでしょうか。
そこで、今回は経理マンの立場からこの記事をなるべく簡単に解説してみたいと思います。(簡単に解説できるとは言っていない)
ポイントは3点あります。
1つ目は対象物件です。リースの場合は「ユーザ指定の物件」ですが、レンタルの場合は「レンタル会社の在庫内の物件」となっています。
リースがよく利用される「コピー機」や「複合機」を例にすると、借主はキヤノンやリコー、富士ゼロックスといったメーカーと交渉し、機種や価格を決定します。そのうえで、リース会社が借主とメーカーの間に介在する商流となります。
2つ目は契約期間です。リースの場合「比較的長期」、レンタルの場合は「比較的短期」という違いがあります。
この「比較的長期」とはどれくらいなのでしょうか?
詳しくは後段で解説しますが、「物件の耐用年数とほぼ同じくらい」とイメージして頂ければ結構です。
3つ目は中途解約です。リースの場合は「原則不可」、レンタルの場合は「原則可」となります。
リース契約は中途解約することが出来ず、借主側の都合で解約する場合は「残りの期間のリース料をすべて支払う」といった条件が課せられる場合が多いですね。
以上をまとめると、リース取引は「ユーザーが欲しい物件を」「耐用年数とほぼ同じ期間利用し」「中途解約もできない」という特徴を持った取引です。
「自分で物件を購入した場合」と経済的な実態がほとんど変わらないじゃないか
という点に気付きませんでしょうか。
もし、リース取引を貸借対照表に計上する必要がなければ、投資家が財務諸表を分析する時に誤解を招いてしまいますね。
これは、1980年代に三光汽船が倒産した際のエピソード
同社は船舶をリースで調達したため貸借対照表にその用船債務が計上されておらず、一般投資家が同社に1兆円を超える負債(簿外を含む)があることを知り得たのは、倒産した後のことだったそうです。
現行のリース取引に関する会計基準(平成20年4月以降開始の年度から適用)では、リース取引を「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に区分し、「ファイナンスリース」は、貸借対照表への計上(売買処理)が必要となります。
ファイナンスリースとは、以下(1)(2)のいずれかを満たすリース取引のことです。
考え方としては、「購入した場合と経済的実態が同じであるかどうか」で線引きするという発想ですね。
(1)リース料総額の現在価値が、購入した場合に支払う金額の90%以上
一方、ファイナンスリースでないリース取引は、オペレーティングリースに区分されます。
「オペレーティングリース」は、現在も貸借対照表に計上する必要がない(賃貸借処理)のままです。
このため、例えば資産効率(ROA)を高く見せたい企業であれば、リース料総額を購入額の90%未満に、解約不能のリース期間が耐用年数の3/4未満に収まるようにすれば、オペリース扱いとして資産化を避けられるルールとなっているのです。
有利子負債が大きな企業であれば、財務を健全に見せるため、負債側のリース債務をオフバランスしたいかもしれません。
以下は、3/8付で日経電子版「リース取引、資産計上へ 不動産・小売りで影響大きく」で紹介された、個別の企業ごとの影響度です。
イオンやセブン&アイのような小売業が新規出店にリースを活用する場合、店舗物件を自社用途に合わせて設計し、リース会社が建物を建築し、借りる形となります。
鉄骨造の店舗物件であれば法定耐用年数は34年ほどですので、リース期間を3/4の25年ほどに設定し、それに応じてリース料総額を調整すれば、オペリースとして貸借対照表に計上する必要がありません。(会計マジック!)
商船三井や日本郵船等の海運会社は船舶で、日本通運や佐川急便といった陸運会社は、物流センター(倉庫)でこのような取引を採用していると推測できます。
リース会社が介在することで、オフバランス化以上の付加価値を提供できているかも重要になるでしょう。
例えば、大手の芙蓉総合リース(8424)を見ると、不動産リース(建物等)に力を入れており、近年の新規契約実行高の伸びはほぼすべて不動産リースで説明が付く状況です。
新規契約の伸びにブレーキが掛かるのみならず、不動産リースは通常のリースに比べて収益性が高いという情報もあるため、営業資産の利益率にも悪影響が出てくるかもしれません。
ブログにまとめて改めて思いましたが、金融セクターは決算の中身が複雑となるため、実態を掴むのが難しいですね。
なお、本記事の内容については、なるべくシンプルな説明、かつ、大きな誤りの無いように記載したつもりですが、不正確な点がありましたらお詫び申し上げます。
本職では経理マンを務めており、3月期決算が目前に迫った今、その準備に追われる日々を過ごしております。花粉と決算で地獄の時期がやってくる…(震)
さて、少し前のことですが、日経新聞にてリース会計の見直しに関する記事が掲載されていました。(リース取引を資産計上 会計基準変更、国際標準へ)
現在、日本の会計基準では「オペレーティングリース」という種類のリースは貸借対照表に計上する必要がない(簿外・オフバランス)のですが、これを資産・負債として計上すべく会計ルールの見直しが検討されているとの内容です。
出典:日本経済新聞 |
しかし、専門外の方にとっては、「オペレーティングリースがオンバランス化される」と言われても、あまりピンと来ないのではないでしょうか。
そこで、今回は経理マンの立場からこの記事をなるべく簡単に解説してみたいと思います。(簡単に解説できるとは言っていない)
1.リース取引とは
まずは、「リース」と類似した取引である「レンタル」との違いを見てみましょう。出典:株式会社JECCホームページ |
1つ目は対象物件です。リースの場合は「ユーザ指定の物件」ですが、レンタルの場合は「レンタル会社の在庫内の物件」となっています。
リースがよく利用される「コピー機」や「複合機」を例にすると、借主はキヤノンやリコー、富士ゼロックスといったメーカーと交渉し、機種や価格を決定します。そのうえで、リース会社が借主とメーカーの間に介在する商流となります。
2つ目は契約期間です。リースの場合「比較的長期」、レンタルの場合は「比較的短期」という違いがあります。
この「比較的長期」とはどれくらいなのでしょうか?
詳しくは後段で解説しますが、「物件の耐用年数とほぼ同じくらい」とイメージして頂ければ結構です。
3つ目は中途解約です。リースの場合は「原則不可」、レンタルの場合は「原則可」となります。
リース契約は中途解約することが出来ず、借主側の都合で解約する場合は「残りの期間のリース料をすべて支払う」といった条件が課せられる場合が多いですね。
以上をまとめると、リース取引は「ユーザーが欲しい物件を」「耐用年数とほぼ同じ期間利用し」「中途解約もできない」という特徴を持った取引です。
「自分で物件を購入した場合」と経済的な実態がほとんど変わらないじゃないか
という点に気付きませんでしょうか。
もし、リース取引を貸借対照表に計上する必要がなければ、投資家が財務諸表を分析する時に誤解を招いてしまいますね。
これは、1980年代に三光汽船が倒産した際のエピソード
同社は船舶をリースで調達したため貸借対照表にその用船債務が計上されておらず、一般投資家が同社に1兆円を超える負債(簿外を含む)があることを知り得たのは、倒産した後のことだったそうです。
2.リース会計の歴史
上記の三光汽船問題がきっかけとなり、1990年代よりリース会計基準が制定され、リース取引は徐々に貸借対照表上に計上される(オンバランス)されるようになりました。現行のリース取引に関する会計基準(平成20年4月以降開始の年度から適用)では、リース取引を「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に区分し、「ファイナンスリース」は、貸借対照表への計上(売買処理)が必要となります。
ファイナンスリースとは、以下(1)(2)のいずれかを満たすリース取引のことです。
考え方としては、「購入した場合と経済的実態が同じであるかどうか」で線引きするという発想ですね。
(1)リース料総額の現在価値が、購入した場合に支払う金額の90%以上
(2)解約不能のリース期間が、リース物件の耐用年数75%以上
「オペレーティングリース」は、現在も貸借対照表に計上する必要がない(賃貸借処理)のままです。
このため、例えば資産効率(ROA)を高く見せたい企業であれば、リース料総額を購入額の90%未満に、解約不能のリース期間が耐用年数の3/4未満に収まるようにすれば、オペリース扱いとして資産化を避けられるルールとなっているのです。
有利子負債が大きな企業であれば、財務を健全に見せるため、負債側のリース債務をオフバランスしたいかもしれません。
以下は、3/8付で日経電子版「リース取引、資産計上へ 不動産・小売りで影響大きく」で紹介された、個別の企業ごとの影響度です。
出典:日本経済新聞
|
イオンやセブン&アイのような小売業が新規出店にリースを活用する場合、店舗物件を自社用途に合わせて設計し、リース会社が建物を建築し、借りる形となります。
鉄骨造の店舗物件であれば法定耐用年数は34年ほどですので、リース期間を3/4の25年ほどに設定し、それに応じてリース料総額を調整すれば、オペリースとして貸借対照表に計上する必要がありません。(会計マジック!)
商船三井や日本郵船等の海運会社は船舶で、日本通運や佐川急便といった陸運会社は、物流センター(倉庫)でこのような取引を採用していると推測できます。
3.リース会社の業績への影響
次に、リース会計の見直しがリース会社の業績に与える影響を考えます。(1)楽観的な立場
まず、実際の会計基準の変更には数年を要すると考えられるため、すぐに業績へ影響が出るわけではありません。また、リース契約は複数年に渡るものであり、過去に積上げたストックの部分からは引き続き収益を得ることができます。リース会社が介在することで、オフバランス化以上の付加価値を提供できているかも重要になるでしょう。
(2)悲観的な立場
他方、不動産のオペリースに力を入れている企業については、今後の新規契約高にマイナス影響が出ることは避けられません。例えば、大手の芙蓉総合リース(8424)を見ると、不動産リース(建物等)に力を入れており、近年の新規契約実行高の伸びはほぼすべて不動産リースで説明が付く状況です。
出典:芙蓉総合リース18年3月期決算説明資料 |
4.結びとして
ここまでダラダラと長文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。ブログにまとめて改めて思いましたが、金融セクターは決算の中身が複雑となるため、実態を掴むのが難しいですね。
なお、本記事の内容については、なるべくシンプルな説明、かつ、大きな誤りの無いように記載したつもりですが、不正確な点がありましたらお詫び申し上げます。
0 件のコメント :
コメントを投稿