こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)です。
今回は保有株の中からトランコム(9058)を紹介します。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.定性分析
4.まとめ
まずは事業別に概況を見てみます。
対象は、主として大・中型トラックを利用した中長距離の輸送案件。
企業向け物流分野で「Uber」みたいなサービスを展開している、という説明の方が分かりやすいかもですね。
さて、ここで一度国内のトラック運送業界の現状に触れておきましょう。
国内トラック運送業界は非常に大きく、営業収入は年14.5兆円、188万人が働く一大産業です。
この業界には、以前から「帰り荷」の問題があります。
トラックが目的地に荷物を運んだ後、帰路の荷物が見つからなければ、帰り道は一銭の収入も発生せず、運転手の給料やガソリン代といったコストだけが出ていってしまいます。
トラックの走行距離のうち、実際に貨物を運んでいた距離の割合を「実車率」と呼ぶのですが、国交省「自動車輸送統計」によると、営業用トラックの実車率は約70%しかありません。
要は、トラックの走行距離のうち3割は、何も貨物を積まずに、ただ空気を運んでいる状況ということですね。
また、トラックが荷物を積んでいる時も、常に能力一杯の荷物を運べるわけではありません。
最大積載量(トン数)に対して実際に積載した貨物の重量の割合を「積載率」と呼びますが、近年は配送業務の小口多頻度化が進んでいることもあり、平均すると50~60%ほどの水準となっています。
このため、日本の営業用トラックの積載効率(輸送量/輸送能力)は、直近では約40%まで低下しています。
もしも、帰り荷が見つからないトラックを有効活用できれば、運送会社は追加収入を得られます。
元々空気を運んでいたトラックを利用しますので、荷主にとっては料金がリーズナブルになる点がメリットになりそうです。
更には、業界の抱える慢性的な問題(ドライバー不足、環境問題(CO2排出削減))の解決にも繋がりそうなんですけどねぇ……
…と、そういった業界状況をふまえて、トランコムの求貨求車サービスは、空車と荷主を結びつけるマッチングサービスとして開始しました。
サービスの概要はこんな感じ
①荷主:トランコム担当者へ依頼
「都内から名古屋への輸送。10tウイング車を希望」
②運送会社:トランコム担当者に車両情報を伝達
「○月×日に都内から名古屋に戻る10tウイング車あるよ~」
③トランコム:両社の間に入って仲介
「条件を確認しつつ人手を介してマッチング」
マッチングビジネスは、一般にネットワーク外部性の働くビジネスであり、多様な運送会社と荷主企業がサービスを使用するほど、その利便性・競争力が増す構造にあります。
トランコムは、同業他社に先行してIT投資を進めた成果もあって、空車情報と荷物情報が優先して集まってくるようになり、段々と他社を寄せ付けないプラットフォームに成長していきました。
現在では、成約(マッチング)件数は1日6千件、年142万件と国内首位。
トランコムに次ぐのが日本貨物運送協同組合連合会が提供する「webkit」というサービスなのですが、これは年間成約件数が約27万件なので、トランコムの成約件数は2位の約5倍と圧倒的です。
最後に、現行のセグメント区分になって以降の業績推移を確認します。ここ9年ほどは毎期増収を続けています。
3PL市場については、先日のハマキョウレックスの銘柄分析でも書きましたが、荷主企業からすると、物流業務を専門企業にアウトソーシングした方が本業に集中でき、更にコストダウンや品質の向上も図れるため、右肩上がりに伸びてきました。
トランコムが3PL的なビジネスを始めたのは1980年代のことで、それは中部エリアにおける家電の共同配送事業でした。
当時はまだ家電量販店も少なく、主な家電の販売チャネルが町の電気屋さんだった時代ですね。
従来、家電メーカーがバラバラに配送車両を手配して、町の電気屋さんに自社製品を届けていたものを、トランコムが複数の家電メーカーの製品を集約し、一括して配送する方式に切り替えることで、大幅な効率化を図ったものです。
今でこそ複数メーカーによる共同配送の事例も増えていますが、当時の常識では「ありえない取り組み」だったそうで、当時の武部会長は社内で「狂気の沙汰」「理想主義者」とレッテルを張られたものを、見事に実現して見せた剛腕でした。
(ただ、このビジネス自体は、90年代に家電量販店が自社センターを整備し、メーカーの工場からセンターに直送するモノの流れが出来ると、廃れてしまったようです。)
こういった企業としてのDNAもあってか、トランコムの3PL事業の特徴は、現場の改善に終始するのではなく「物流企画能力」に長けている点にあるとかもねぎは考えています。
例えば、昨年度の新規受託案件では、ユニ・チャーム、ライオン、資生堂の3社の物流センターを統合して運営効率化を実現。「グリーン物流優良事業者」として経産省から表彰を受けていました。共同配送のトランコムの面目躍如ですね。
もう一つの特徴としては、顧客が生活必需品(衛生品・食品)や生協宅配といったディフェンシブな業種が多く、景気の変動をあまり受けない点も挙げられます。
新型コロナの感染拡大下でも、生活衛生品や生協宅配の物量は増加傾向で推移しているようです。
過去のセグメント業績推移は以下の通りです。
余り特徴のない事業であるため説明は割愛します。過去の業績はこんな感じ
数値は各年度の有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」を拾いました。
売上高利益率はそこそこのレベルですが、設備投資の少ないアセットライトなビジネスモデルであり、資本効率は一貫して高いです。
連続増配年数は19年、日本企業全体の中でも第7位に位置します。
自家物流費や物流子会社への支払物流費も全体の1/4ほど残っていますので、3PL化の流れが更に進展する可能性もありそうです。
また、3PL業界への参入企業は多く、最大手でもシェアは約10%ほどしかありませんので、今後は企業間でのシェア争いが進んでいくかもしれません。
例えば近年は、物量の少ない荷主向けのサービス(中ロット混載貨物)、主要路線での定期便(幹線物流)、パレット回収物流といった取組を進めています。
ロジスティックマネジメント事業では、新規受託案件の獲得によって、更に成長していくことが出来ると思われます。
ここ数年は、空車情報<貨物量というトレンドが続いていましたが、足元では空車>貨物と逆転しました。
生産請負・人材派遣といったシクリカルで特徴のない事業についても、景気の落ち込みによる打撃が大きいと予測されます。
トランコムも荷主や運送会社の業務を効率化するアプリを開発する等の対応していますが、競争力強化で後れを取らないか注視していく必要があります。
・予想PER 15.98倍
・実績PBR 1.9倍
・配当利回り 1.43%
僕はなんやかんや10年来の株主になってしまいました。
日本国内に山積する物流の課題を解決する、日本で一番付加価値の大きい物流会社に成長して欲しいなぁ~と願っています。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
今回は保有株の中からトランコム(9058)を紹介します。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.定性分析
4.まとめ
1.事業内容
トランコムは、元々は地場の運送会社でしたが、2代目社長である武部宏氏の時代に、輸送マッチングサービスや物流センター構築運営といった付加価値の高いビジネスへと転換しました。決算短信からかもねぎ作成 |
(1)物流情報サービス
車両情報と荷物情報をマッチングする「求貨求車サービス」という配車ビジネスを展開しています。対象は、主として大・中型トラックを利用した中長距離の輸送案件。
企業向け物流分野で「Uber」みたいなサービスを展開している、という説明の方が分かりやすいかもですね。
さて、ここで一度国内のトラック運送業界の現状に触れておきましょう。
国内トラック運送業界は非常に大きく、営業収入は年14.5兆円、188万人が働く一大産業です。
出典:国交省 物流を取り巻く現状について
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トラックが目的地に荷物を運んだ後、帰路の荷物が見つからなければ、帰り道は一銭の収入も発生せず、運転手の給料やガソリン代といったコストだけが出ていってしまいます。
トラックの走行距離のうち、実際に貨物を運んでいた距離の割合を「実車率」と呼ぶのですが、国交省「自動車輸送統計」によると、営業用トラックの実車率は約70%しかありません。
要は、トラックの走行距離のうち3割は、何も貨物を積まずに、ただ空気を運んでいる状況ということですね。
また、トラックが荷物を積んでいる時も、常に能力一杯の荷物を運べるわけではありません。
最大積載量(トン数)に対して実際に積載した貨物の重量の割合を「積載率」と呼びますが、近年は配送業務の小口多頻度化が進んでいることもあり、平均すると50~60%ほどの水準となっています。
このため、日本の営業用トラックの積載効率(輸送量/輸送能力)は、直近では約40%まで低下しています。
出典:国交省 物流を取り巻く現状について |
もしも、帰り荷が見つからないトラックを有効活用できれば、運送会社は追加収入を得られます。
元々空気を運んでいたトラックを利用しますので、荷主にとっては料金がリーズナブルになる点がメリットになりそうです。
更には、業界の抱える慢性的な問題(ドライバー不足、環境問題(CO2排出削減))の解決にも繋がりそうなんですけどねぇ……
…と、そういった業界状況をふまえて、トランコムの求貨求車サービスは、空車と荷主を結びつけるマッチングサービスとして開始しました。
サービスの概要はこんな感じ
①荷主:トランコム担当者へ依頼
「都内から名古屋への輸送。10tウイング車を希望」
②運送会社:トランコム担当者に車両情報を伝達
「○月×日に都内から名古屋に戻る10tウイング車あるよ~」
③トランコム:両社の間に入って仲介
「条件を確認しつつ人手を介してマッチング」
マッチングビジネスは、一般にネットワーク外部性の働くビジネスであり、多様な運送会社と荷主企業がサービスを使用するほど、その利便性・競争力が増す構造にあります。
トランコムは、同業他社に先行してIT投資を進めた成果もあって、空車情報と荷物情報が優先して集まってくるようになり、段々と他社を寄せ付けないプラットフォームに成長していきました。
現在では、成約(マッチング)件数は1日6千件、年142万件と国内首位。
トランコムに次ぐのが日本貨物運送協同組合連合会が提供する「webkit」というサービスなのですが、これは年間成約件数が約27万件なので、トランコムの成約件数は2位の約5倍と圧倒的です。
最後に、現行のセグメント区分になって以降の業績推移を確認します。ここ9年ほどは毎期増収を続けています。
(2)ロジスティックマネジメント
いわゆる「3PL(サードパーティ・ロジスティック)」と呼ばれる物流センター等の構築運営を行っています。3PL市場については、先日のハマキョウレックスの銘柄分析でも書きましたが、荷主企業からすると、物流業務を専門企業にアウトソーシングした方が本業に集中でき、更にコストダウンや品質の向上も図れるため、右肩上がりに伸びてきました。
出典:日立物流個人投資家向けIRセミナー資料 |
当時はまだ家電量販店も少なく、主な家電の販売チャネルが町の電気屋さんだった時代ですね。
従来、家電メーカーがバラバラに配送車両を手配して、町の電気屋さんに自社製品を届けていたものを、トランコムが複数の家電メーカーの製品を集約し、一括して配送する方式に切り替えることで、大幅な効率化を図ったものです。
今でこそ複数メーカーによる共同配送の事例も増えていますが、当時の常識では「ありえない取り組み」だったそうで、当時の武部会長は社内で「狂気の沙汰」「理想主義者」とレッテルを張られたものを、見事に実現して見せた剛腕でした。
(ただ、このビジネス自体は、90年代に家電量販店が自社センターを整備し、メーカーの工場からセンターに直送するモノの流れが出来ると、廃れてしまったようです。)
こういった企業としてのDNAもあってか、トランコムの3PL事業の特徴は、現場の改善に終始するのではなく「物流企画能力」に長けている点にあるとかもねぎは考えています。
例えば、昨年度の新規受託案件では、ユニ・チャーム、ライオン、資生堂の3社の物流センターを統合して運営効率化を実現。「グリーン物流優良事業者」として経産省から表彰を受けていました。共同配送のトランコムの面目躍如ですね。
出典:トランコム決算説明資料 |
新型コロナの感染拡大下でも、生活衛生品や生協宅配の物量は増加傾向で推移しているようです。
過去のセグメント業績推移は以下の通りです。
(3)その他
上記のほか、工場での生産請負・人材派遣サービスを手掛ける「インダストリアルサポート事業」と、海外ビジネスやシステム開発事業等をまとめた「その他事業」を手掛けています。余り特徴のない事業であるため説明は割愛します。過去の業績はこんな感じ
2.財務状況
続いてトランコムの過去の業績推移を確認します。数値は各年度の有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」を拾いました。
売上高利益率はそこそこのレベルですが、設備投資の少ないアセットライトなビジネスモデルであり、資本効率は一貫して高いです。
連続増配年数は19年、日本企業全体の中でも第7位に位置します。
3.定性分析
次に市場構造、ビジネスモデル、リスク要因の視点で定性分析を行います。(1)市場構造
①物流情報サービス
国内のトラック運送市場は14.5兆円の規模があり、ドライバー不足が叫ばれる一方で、トラックの積載効率は40%しかありません。ドライバー・車両の能力が十分に活用されていない状況と言えます。②ロジスティックマネジメント
国内3PL市場の規模は、これまで右肩上がりに成長を続け、おおよそ4.5兆円ほどに拡大しました。自家物流費や物流子会社への支払物流費も全体の1/4ほど残っていますので、3PL化の流れが更に進展する可能性もありそうです。
また、3PL業界への参入企業は多く、最大手でもシェアは約10%ほどしかありませんので、今後は企業間でのシェア争いが進んでいくかもしれません。
(2)ビジネスモデル
①他社と違う優れた部分があるか
投下資本が少ないビジネスであり、成長のために大規模な設備投資が必要ありません。②他社に対する堀を持った事業か
物流情報サービス事業は「ネットワーク効果」、ロジスティックマネジメント事業は「乗り換えコスト」という経済上の堀を有します。③再現可能な勝ちパターンがあるか
物流情報サービス事業では、サービスの拡充等を通じて、自社のプラットフォームに参加する荷主企業・運送会社を拡大させていくことです。例えば近年は、物量の少ない荷主向けのサービス(中ロット混載貨物)、主要路線での定期便(幹線物流)、パレット回収物流といった取組を進めています。
ロジスティックマネジメント事業では、新規受託案件の獲得によって、更に成長していくことが出来ると思われます。
(3)リスク要因
①新型コロナウイルス
物流情報サービス事業は、2020年4月の緊急事態宣言発令により貨物量が大幅に減少(リーマンショック時並み)しています。ここ数年は、空車情報<貨物量というトレンドが続いていましたが、足元では空車>貨物と逆転しました。
出典:トランコム決算説明資料 |
②テクノロジーを駆使した競合の新規参入
伸びしろの大きい物流情報サービスですが、テクノロジーやAIを活用して効率的にマッチングを行う企業が現れた場合、人手を介したスタイルを取るトランコムは遅れを取るリスクがあると考えています。トランコムも荷主や運送会社の業務を効率化するアプリを開発する等の対応していますが、競争力強化で後れを取らないか注視していく必要があります。
4.まとめ
最後に現在の株価指標を確認します。・予想PER 15.98倍
・実績PBR 1.9倍
・配当利回り 1.43%
僕はなんやかんや10年来の株主になってしまいました。
日本国内に山積する物流の課題を解決する、日本で一番付加価値の大きい物流会社に成長して欲しいなぁ~と願っています。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
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