【銘柄分析】ハマキョウレックス(9037)|物流センター運営のプロフェッショナル

こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)です。

今回は保有株の中からハマキョウレックス(9037)を紹介します。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.定性分析
4.まとめ

1.ハマキョウレックスの事業内容

ハマキョウレックスは、現会長の大須賀正孝氏によって1971年により設立された物流会社です。

祖業は貨物自動車運送業ですが、伊藤忠と共同でイトーヨーカ堂向けの物流センター運営を受託(1993年)したことをきっかけに3PL(サードパーティ・ロジスティックス)事業に進出しました。

現在は、この物流センター(3PL)事業と貨物自動車運送事業の二本柱で事業を展開しています。

出典:20年3月期 決算補足説明資料
まずはセグメントごとの概況を見てみましょう。

(1)物流センター事業

ハマキョウの営業収益の56%、営業利益の74%を占める事業です。

3PL(サードパーティ・ロジスティックス)とは、企業の物流業務を包括して受託するビジネスのことを言います。ハマキョウは、主として物流センター運営を請け負っています。

物流センターで扱う荷物量は日々大きく変動します。そこで働く労働者もパートさんが中心となり、管理は楽ではありません。
荷主企業からすると、業務を専門企業にアウトソーシングした方が本業に集中でき、更にコストダウンや品質の向上も図れることから、3PL市場は右肩上がりに伸びてきました。

出典:日立物流個人投資家向けIRセミナー資料

さて、3PLが成長事業とは言っても、物流センターの運営というのは地味なうえに、物量の波動があって簡単な仕事ではありません。

ハマキョウレックスは、競争力のあるセンター運営を行うため「日々収支」「全員参加」「コミュニケーション」という3つのキーワード(哲学)を掲げています。

・日々収支

各拠点で日々決算を行い、その日1日の損益を把握する仕組みです。日々収支を行うことで、現場の課題に見当をつけ、改善を進めやすくなります。

・全員参加

物流センターは、パート従業員の割合が非常に多い職場です。
その生産性アップのためには、正社員のみならずパート従業員にも当事者意識を持ってもらいつつ、その能力を引き出すことが重要です。

・コミュニケーション

仕事を上から押し付けるのではなく、納得して仕事をしてもらえるようコミュニケーションを取ることを重視しています


上記の3つのキーワードに基づく「現場改善力」がハマキョウレックスの最大の強みです


例えば「日々収支」の活用法として、仕事が早く終わるなら退社時間を繰り上げて帰ってもらう「アコーディオン方式」の人員配置で、パートの勤務時間を臨機応変に調整しています。

「全員参加」を促すための「日替わり班長制」という制度もあります。
班長というのは、グループ内の作業の進捗を把握し、他部署とのミーティングに参加したり、班員や他のグループと調整を行う役割です。
これを、パート従業員が代わる代わる交代で務めます。
パート従業員も班長を経験することで、色々なことを考えるようになり、周りとのコミュニケーションも促進されるようです。
女性が多い職場で、お局さんができにくい…といったメリットもあるようです(小声)


同社の物流センター事業では、現場改善による物流費削減を荷主に提案し、あるいはM&Aをした物流会社の生産性を向上させることで、業績を拡大してきました。

以下は過去10年間の業績推移です。

(2)貨物自動車運送事業

いわゆるトラック運送を手掛けるセグメントで、営業収益の44%、営業利益の26%を占めています。

2004年に近鉄グループの物流子会社である近鉄物流(現:近物レックス)を買収したことでトップラインが大きく伸びました。
利益率についても、近年は運賃値上げ等により徐々に改善しています。

過去10年間の業績推移です。

2.ハマキョウレックスの財務状況

続いてハマキョウレックスの過去の業績推移を確認します。
数値は各年度の有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」を拾いました。

リーマンショックやチャイナショック等の不況をものともせず成長を続けています。
連続増配年数は14年と日本有数ですね。

3.ハマキョウレックスの定性分析

次に市場構造、ビジネスモデル、リスク要因の3つの視点で定性分析を行います。

(1)市場構造

国内3PL市場の規模は、これまで右肩上がりに成長を続け、おおよそ4.5兆円ほどに拡大しました。

日本ロジスティックスシステム協会の物流コスト調査(2016年)によれば、現在、企業の物流費の73%ほどがアウトソーシングです。
一方、自家物流費や物流子会社への支払物流費も全体の27%ほどを残っていますので、3PL化の流れは更に進展する可能性もありそうです。


また、3PL業界には多数の企業が参入しており、日立物流やセンコーグループ、日本通運、近鉄エクスプレス等が大手と言われていますが、最大手の日立物流でも3PLの売上高は4,500億円ほど、シェアは約10%です。

今後は、企業間でのシェア争いが進んでいくかもしれません。

(2)ビジネスモデル

①他社と違う優れた部分があるか

「日々決算」「全員参加」「コミュニケーション」の3点を軸にした現場力・コスト競争力に優れた企業です。

②他社に対する堀を持った事業か

顧客がハマキョウレックスのサービスや料金に満足している場合、あるいは、外部委託によって物流企画能力を失っていた場合、3PL会社の変更は起こりにくいです。
そういった意味で「乗り換えコスト」という堀を持ったビジネスと考えらえます。

③再現可能な勝ちパターンがあるか

新規受託のほか、M&Aによって買収した企業にハマキョウ流の経営手法を持ち込むことで採算改善を図ることができます。

(3)リスク

①新型コロナウイルス

ハマキョウレックスの物流センターの取扱い品目は、食品31%、アパレル28%、医療・医薬品20%、雑貨14%という構成になっています。
主力の食品や医薬品は影響が少ないものの、アパレルや旅行関連品はマイナスの影響が出ているようです。
旅行関連というのは、過去にJTBやJALの物流子会社を買収しているので、そこら辺の子会社群のことでしょうね。

出典:20年3月期決算補足説明資料

また、労働集約的な現場である以上、自社でコロナウイルスの感染者が発生するリスクはありそうです。

②労務関係

2020年4月より「働き方改革法」が施行され、正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇格差を解消すべきという「同一労働同一賃金制度」が始まりました。

物流界隈では、これまでは正規と非正規で手当てに差があることが多かったのですが、今後は非正規社員にも同等の手当てを支給する必要があり、これは業界全体として人件費のアップ要因になると思われます。

IRに照会した際は、「影響が出る場合は企業の自助努力(コスト改善)で吸収し、どうしても難しい場合は荷主に負担を求める」といったスタンスのようでした。

なお余談ですが、同社は手当の不平等に関する裁判を起こされ、2018年に敗訴。これがいわゆる「ハマキョウレックス事件」と呼ばれ、労務界隈では(不名誉なことに)有名になっていまいました。

③競争環境の変化

近年は、物流センターの自動化・省人化を図るために自動搬送ロボット(AGV)の導入が本格化し始めました。
物流センターの在り方が変わった際に、ハマキョウレックスが引き続きコスト競争力・現場改善力を発揮し続けられるかはまだ分かりません。

4.まとめ

最後に現在の株価指標を確認します。

・予想PER  10.18倍
・実績PBR  1.01倍
・配当利回り 2.16%


将来のリスク要因はあるものの、新規受託やM&Aによる成長余地は十分にあると思います。

PERはほぼ一桁です。過去の業績や競争優位性から見ても、今の株価は割安圏だと思うんですけどねぇ~


本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。

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