だから利益は信用できない|日本たばこ産業とIFRS

日本たばこ産業(JT)といえば、日本最大のたばこメーカーであり、近年はM&Aなどを通じて海外事業を大きく伸ばしている大型優良企業です。

ところで同社は、前期(2012年3月期)決算から国際会計基準(IFRS)の任意適用に踏み切り、同基準に則った財務諸表を公開しました。

若干の今更感がありますが、下記の表に日本たばこ産業(JT)の過去4年間の決算数字をまとめましたので、会計基準の変わる前後と合わせてその概要を見て頂きたいと思います。



コレを見て、差し当たってJT株に投資をしようと考えている人は、次のようなポイントに注目するかもしれません。 


(1)営業利益率が大幅に改善したよ!

企業の収益性を表すとされる営業利益率を見ると、前年度の5.31%から大幅に改善し、22.58%となっています。

(→タバコの値段の半分以上がタバコ税であることは有名です。従来、JTはタバコ税を含む売上高を収益として計上していました。しかし、国際会計基準において間接税を収益に計上する処理は認められていません。結果、売上高は減少し、利益率が改善することになりました。)


(2)営業利益が大幅に増加したよ!

同社の営業利益を見ると、前年度の3,268億円から4,591億円へと大幅(約4割)に上昇しています。大型株でこれだけ成長することは容易ではありません。JTの海外展開の巧みさと経営陣の優秀さを表しているに違いないことでしょう。

(→海外展開の巧みさや経営陣の優秀さもあるでしょうが、最も大きな要因はのれんに係る会計処理の変更にあります。大型買収を繰り返したJTは多額の「のれん」を抱えており、その償却費は過去3年間で900億~1,000億/年ありました。しかし、国際会計基準においては定期的にのれんを償却する必要が無いため、同社の利益は増加したのです。)


売上高や利益率の変動は会計上の表示が変わっただけのことであり、のれんの処理についても、キャッシュフローで企業を評価する限り、意味のある変化とはいえません。
しかし、利益率や一株利益は増加しますので、営業利益率やPERといった指標を見れば魅力が増す・・・という良く分からない結果になっています。

・会計上の利益は、会計処理や会計基準次第のアヤフヤなものである。

・従って、利益ベースの指標で企業を評価すると、企業価値を見誤る可能性がある。


といったことが良く分かり、面白いな~と思いました。

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