この投資信託を捨てて、日経平均を買いなさい。

「ひふみ投信」という、優れた成績を残している投信があります。

以下は、運用責任者の藤野氏が執筆された『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』という著書の紹介文ですが、3年でTOPIXを50%以上アウトパフォーマンスしたというキャッチは刺激的で、購入すれば間違いなく儲けられる気分にさせてくれます。

◆今、日本を変える新しいスター企業が続出!
著者がファンドマネジャーを務める「ひふみ投信」はリーマンショックが起きた2008年10月から運用を始めました。現在TOPIXが当時より30%下落しているのに対し、ひふみ投信は25%上がっており、50%以上の差がついています。密かに日本の株式市場でスター企業が続々と誕生しているなか、「ひふみ投信」がこの3年で実際に組入れた銘柄で、株価が5倍以上になった銘柄をいくつかご紹介しています。ZOZO TOWNの「スタートトゥデイ」や、メガネ専門店「JINS」を運営している「ジェイアイエヌ」などがその一例ですが、超成長株をどうやって見つけ、投資をすればいいのか、個人投資家こそがお宝銘柄を見つけられる、その手法などが満載です!


しかし注意しないといけません。
ひふみ投信が人気化し、多くの個人から大量の資金を集めるようになった場合、かなり高い確率で運用成績が劣化していくと予測できるからです。

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・・・といっても、決してひふみ投信に実力が無いと言っているわけではありませんよ。
ファンド運用の構造上、規模が大きくなると、規模が小さい時と同じような運用が出来なくなるという事実を考慮しているだけです。

これは、米国バンガード社の創始者J・C・ボーグル氏の言ですが、「比較的規模が小さいときに目覚しいリターンを記録したファンドは、大きくなった時にはその優位性を失ってしまう傾向が強い」とのことです。

以下がその理由ですが・・・

1.ファンドに組み入れることができる株式のユニバースが減少すること
2.取引コストが増加すること
3.ポートフォリオの運用がますます組織化されてグループ志向になり、機知にとんだ個人のファンドマネージャーに依存しなくなること

・・・により、ファンドの規模に反比例し、リターンが悪化していくそうです

具体的な例としては、米国で1970年代に優れたパフォーマンス(市場平均に対し年率+4.8%)を上げたファンド群について調査したところ、1980年代の成績は平均以下(年率▲1.0%)に落ちたという研究があります。
(上記の出所は、J・C・ボーグル著『インデックスファンドの時代』12章)

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この法則は米国だけでなく、日本の投資信託にも当てはまっています。

以下の図は、数年前に直販型投信の先駆けとして一世を風靡したとある日本株ファンドの、TOPIXに対する超過リターン(赤)と純資産額(青)の推移を半年ごとに記したものです。

その投信とは、かの有名な「さわかみファンド」なのですが、純資産額の増加につれTOPIXに対する相対的パフォーマンスが劣化していく傾向が見てとれるかと思います。

(図)さわかみファンドの対TOPIX超過リターンと純資産額の推移



今でこそ運用姿勢を疑問視されることの多いさわかみファンドですが、当初は抜群の運用成績を上げておりました。

(参考)00年1月~04年12月末のリターン
・TOPIX ▲33.25%(1,722.20→1,149.63)
・さわかみファンド +37.00%(基準価額9,298円→12,738円)
→超過リターン +70.25%


00年初~04年末までの期間を見れば、TOPIXが3割以上下落する中、さわかみファンドは3割以上上昇。その超過リターンは「70%!」もありました。指数が下落する中高い運用成績を上げている姿は、まるで「ひふみ投信」を思い起こさせます。

しかし、純資産額が1,000億円を越えた頃から成績は悪化し始め、09年を除き、ほぼTOPIXに連動した値動きとなっています。(TOPIXは配当抜きである一方、さわかみファンドは配当込みの指数であることも考慮しなければなりません)

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仮にひふみ投信が順調に純資産額を伸ばし、ファンドの規模が500億円、1,000億円、2,000億円・・・・と増えていった時のことを考えましょう。マーケットインパクトを考慮すると小型株を大量に買うことは難しくなっていき、日経平均に含まれるような大型株を中心にPFを組まざるを得ないときが来ると思います。

そうなった場合、その投資信託を売って日経平均に投資するというのも、一つの選択肢になるのだろうな、と思います。


※本記事は、旧ブログで2012年に作成した記事をBloggerへ移転したものです。


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