こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)です。
今回は、三菱商事系の中堅化学品商社である明和産業(8103)の分析を行いたいと思います。
商社セクターというのは、企業内容や取扱商品が外部の人間からは分かりにくく、株価も割安な傾向にあります。
今回紹介する明和産業は、三菱グループと親密な関係にあることと、冷戦時代より伝統的に旧・共産圏での取引に強みを持っている点が特徴の企業です。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ
設立の経緯から三菱系の有力メーカーと関係が深く、三菱化成(現:三菱ケミカル)、旭硝子(現:AGC)、江戸川化学(現:三菱ガス化学)といった企業の製品を主体に業容を拡大していきます。
また、当時は米・ソが対立する冷戦の真っ最中でしたが、明和産業は三菱商事(財閥解体後に再結成)より社会主義国との取引窓口に指定され、ある時期まで中国・北ベトナム・ソ連・東欧・キューバといった国との取引を一手に扱いました。
特に中国とは、1962年に「中国貿易友好商社」に指定される等、深い関係を築いてきました。
1980~90年代には、キューバとベトナム向け取引で自己資本を超える200億円超の債権が回収不能となり、経営危機に陥いることもありましたが、三菱商事の強力な支援を受けて倒産を回避。
その後は、リストラや新規事業の育成を進めることで、近年は業績が安定してきています。
19年3月期決算における各セグメントの売上・利益は以下の通りです。
これらを順に解説していきます。
電池材料ビジネスでは、三菱ケミカル・中国現地資本との合弁会社「青島菱達化成有限公司」でリチウムイオン電池の負極材の原料(球形化黒鉛と言います)を生産し、これを三菱ケミカルや地場の電池メーカーに販売しています。
現在の中国では、国を挙げて電池産業やEVの普及を図っており、地場メーカー向けの取引が年々伸びているようです。
また、同社は1990年代以前から中国産のレアメタルやレアアースの取扱いを開始しており、「アンチモン」「ストロンチウム」「ジルコニウム」といったレアメタル類や「レアアース」を日本企業等に販売しています。
更に樹脂および難燃剤ビジネスでは、各種樹脂を販売するとともに、関連会社の鈴裕科学と中国・タイで製造した「三酸化アンチモン」という難燃剤(プラスチックを燃えにくくする材料)を販売しています。
第一事業本部のセグメント売上高は387億円、セグメント利益913百万円です。
主力製品は2つあり、一つは主に建機の油圧装置を円滑に動かすために使用される「建機向け潤滑油」、もう一つはエアコンのコンプレッサーに使用される「冷凍機油」です。どちらも、中国経済の発展の波に乗って毎年販売を伸ばし、全社利益の1/3を明和上海が稼ぐまで育ちました。
足元では、ベトナム等、新たな地域での潤滑油ビジネス立ち上げを目指しています。
第二事業本部のセグメント売上高は424億円、セグメント利益864百万円です。
化学製品は、インキ、塗料、製紙薬剤、粘着剤、FRP向けが中心、大日本塗料や荒川化学工業、SHOEI等が大口顧客のようです。
建材製品は、旭硝子の開発したウレタン防水材「サラセーヌ」や、塩ビシート「ダイヤフォルテ」等を扱っています。
第三事業本部のセグメント売上高は706億円、セグメント利益は902百万円です。
2社合計で毎年5~6億円の持分法損益を計上しており、業績を下支えしています。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。
2000年頃に不良債権の処理で多額の損失を計上したものの、その後は順調に利益を計上し、2010年3月期に復配を果たしました。
大きく成長しているわけではありませんが、ここ10年ほどは、まずまず安定した業績を維持しています。
ここでは、ベンジャミン・グレアムの提唱した「正味流動資産価値」をベースに見ていきます。
直近決算における明和産業の正味流動資産価値は159億円(流動資産548億円-総負債388億円)なのに対して、足元の時価総額は149億円。
株価は資産価値を下回っています。
154億円保有している投資有価証券も一定の資産価値が見込めますね。
リスクとしては、売掛金に中国向け残高がそこそこ含まれてることでしょうか。
過去に同業の江守商事が突然死したことは今も忘れません…中国コワイ
・予想PER : 6.34倍
・実績PBR : 0.45倍
・予想配当利回り : 3.36%
この他、株主優待として500円相当のクオカード(100株以上、6か月以上継続保有)と、同社の取り扱うボヘミアガラス製品の割引券等を頂けます。
ボヘミアガラスはチェコの伝統工芸品です。
旧・チェコスロバキア時代から長年扱ってきた商品であり、社会主義国に強かった同社の歴史を感じさせてくれますね。
明和産業は地味な企業であり、主力として大量に買い込んでいくタイプではないものの、十分な割安さはあると思います。先日少しだけ購入して、優待枠としてPFの一角に組み入れてみました。
なお、投資をする際は自己責任でお願いいたします。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
今回は、三菱商事系の中堅化学品商社である明和産業(8103)の分析を行いたいと思います。
商社セクターというのは、企業内容や取扱商品が外部の人間からは分かりにくく、株価も割安な傾向にあります。
今回紹介する明和産業は、三菱グループと親密な関係にあることと、冷戦時代より伝統的に旧・共産圏での取引に強みを持っている点が特徴の企業です。
目次
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ
1.事業内容
(1)沿革
1947年にGHQの占領政策である「財閥解体」により旧三菱商事が解体され、160社超の新会社が分割・設立されました。明和産業はその中の1社として、旧三菱商事の化工品部門の出身者により創立された企業です。設立の経緯から三菱系の有力メーカーと関係が深く、三菱化成(現:三菱ケミカル)、旭硝子(現:AGC)、江戸川化学(現:三菱ガス化学)といった企業の製品を主体に業容を拡大していきます。
また、当時は米・ソが対立する冷戦の真っ最中でしたが、明和産業は三菱商事(財閥解体後に再結成)より社会主義国との取引窓口に指定され、ある時期まで中国・北ベトナム・ソ連・東欧・キューバといった国との取引を一手に扱いました。
特に中国とは、1962年に「中国貿易友好商社」に指定される等、深い関係を築いてきました。
1980~90年代には、キューバとベトナム向け取引で自己資本を超える200億円超の債権が回収不能となり、経営危機に陥いることもありましたが、三菱商事の強力な支援を受けて倒産を回避。
その後は、リストラや新規事業の育成を進めることで、近年は業績が安定してきています。
(2)事業の特徴
明和産業の事業セグメントは以下の4区分となっています。出典:明和産業19年3月期 決算説明会資料 |
出典:盟和産業19年3月期決算短信 |
①第一事業本部
本事業の主力製品は「電池材料」「レアメタル・レアアース」「樹脂および難燃剤」の3点となります。電池材料ビジネスでは、三菱ケミカル・中国現地資本との合弁会社「青島菱達化成有限公司」でリチウムイオン電池の負極材の原料(球形化黒鉛と言います)を生産し、これを三菱ケミカルや地場の電池メーカーに販売しています。
現在の中国では、国を挙げて電池産業やEVの普及を図っており、地場メーカー向けの取引が年々伸びているようです。
また、同社は1990年代以前から中国産のレアメタルやレアアースの取扱いを開始しており、「アンチモン」「ストロンチウム」「ジルコニウム」といったレアメタル類や「レアアース」を日本企業等に販売しています。
更に樹脂および難燃剤ビジネスでは、各種樹脂を販売するとともに、関連会社の鈴裕科学と中国・タイで製造した「三酸化アンチモン」という難燃剤(プラスチックを燃えにくくする材料)を販売しています。
第一事業本部のセグメント売上高は387億円、セグメント利益913百万円です。
②第二事業本部
本事業は、中国の現地法人「明和上海」が手掛ける中国での石油製品ビジネスが中心です。主力製品は2つあり、一つは主に建機の油圧装置を円滑に動かすために使用される「建機向け潤滑油」、もう一つはエアコンのコンプレッサーに使用される「冷凍機油」です。どちらも、中国経済の発展の波に乗って毎年販売を伸ばし、全社利益の1/3を明和上海が稼ぐまで育ちました。
足元では、ベトナム等、新たな地域での潤滑油ビジネス立ち上げを目指しています。
第二事業本部のセグメント売上高は424億円、セグメント利益864百万円です。
③第三事業本部
本事業は、上記に当てはまらない幅広い化学製品・建材製品を取り扱っています。化学製品は、インキ、塗料、製紙薬剤、粘着剤、FRP向けが中心、大日本塗料や荒川化学工業、SHOEI等が大口顧客のようです。
建材製品は、旭硝子の開発したウレタン防水材「サラセーヌ」や、塩ビシート「ダイヤフォルテ」等を扱っています。
第三事業本部のセグメント売上高は706億円、セグメント利益は902百万円です。
④自動車事業・その他
売上・利益は軽微ですが、本事業はホンダ系の内装材メーカーである「クミ化成」、リケンとのインドネシア合弁会社「P.T.Pakarti Riken Indonesia」という有力な関連会社2社を抱えています。2社合計で毎年5~6億円の持分法損益を計上しており、業績を下支えしています。
2.財務状況
(1)財務数値
まず、明和産業の過去の業績推移を確認します。数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。
2000年頃に不良債権の処理で多額の損失を計上したものの、その後は順調に利益を計上し、2010年3月期に復配を果たしました。
大きく成長しているわけではありませんが、ここ10年ほどは、まずまず安定した業績を維持しています。
(2)資産価値
次に、収益面と合わせて資産価値を確認します。ここでは、ベンジャミン・グレアムの提唱した「正味流動資産価値」をベースに見ていきます。
直近決算における明和産業の正味流動資産価値は159億円(流動資産548億円-総負債388億円)なのに対して、足元の時価総額は149億円。
株価は資産価値を下回っています。
154億円保有している投資有価証券も一定の資産価値が見込めますね。
リスクとしては、売掛金に中国向け残高がそこそこ含まれてることでしょうか。
過去に同業の江守商事が突然死したことは今も忘れません…中国コワイ
3.まとめ
最後に現時点(2019年6月)の明和産業の株価指標を確認します。・予想PER : 6.34倍
・実績PBR : 0.45倍
・予想配当利回り : 3.36%
この他、株主優待として500円相当のクオカード(100株以上、6か月以上継続保有)と、同社の取り扱うボヘミアガラス製品の割引券等を頂けます。
ボヘミアガラスはチェコの伝統工芸品です。
旧・チェコスロバキア時代から長年扱ってきた商品であり、社会主義国に強かった同社の歴史を感じさせてくれますね。
明和産業は地味な企業であり、主力として大量に買い込んでいくタイプではないものの、十分な割安さはあると思います。先日少しだけ購入して、優待枠としてPFの一角に組み入れてみました。
なお、投資をする際は自己責任でお願いいたします。
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
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