【読書メモ】ウォール街のモメンタムウォーカー

株式投資のド初心者であった頃に、名著「ウォール街のランダムウォーカー」に出会えたのは幸運だったなぁと思っています。
市場平均を上回るリターンを継続的に上げることは非常に難しいこと、そして大半の投資家にとってはインデックスファンドが最良の投資先であることを学べました。
今はなんだかんだと個別株投資を嗜んでおりますが、自分にセンスが無いと気付けば、するっとパッシブ派に宗旨替えするのもやぶさかではありません。

さてさて、ランダムウォーカーの著者マルキール氏は、いわゆる「チャート分析」に対して「錬金術と大差ない」と厳しい評価をしており、例えば本文には以下のような記述があります。
チャーティストたちは、市場にはモメンタムが存在すると信じている。モメンタムとは上昇し続けてきた銘柄は引き続き上昇を続けるし、下がり始めた銘柄はさらに下がるという傾向のことをいう。
このテクニカル・ルールに関しては、徹底的なテストが行われてきた。いくつかの主要取引所を対象に、また二十世紀初めにさかのぼる膨大のデータが、そのために用いられた。過去の株価を分析したところで、将来の株価を予測するのに何の役に立たないというのが、その結論である。(以下略)

このため、僕自身チャート分析は基本的に信用していませんし、パッシブ投資家やファンダメンタル投資家も基本的には皆そうだろう、という認識でいました。

しかし、先ごろよりチャート分析とは縁のなさようなコテコテのバリュー投資家の方が、とある「テクニカル分析の本」を非常に良い本だと紹介していらっしゃったのです。
そして半信半疑なまま手に取ったのが、掲題の「ウォール街のモメンタムウォーカー」という書籍です。

1.概要

著者のゲイリー・アントナッチ氏(以下、アントナッチ)は、米国で35年以上の実績を持つ投資家であり、日本でいうところの「凄腕個人投資家」みたいな?ポジションの方のようです。

本書のテーマである「モメンタム」とは、色々な定義のある用語ですが、ここでは以下の意味で使われています。

(1)絶対モメンタム
・任意の期間におけるある資産のリターンのこと
・例えば、ある企業の株価が1ヵ月前と比べて上昇していれば、絶対モメンタムは正

(2)相対モメンタム
・ある資産の別資産に対するリターンのこと
・例えば、ある企業の株価のリターンが、別企業のリターンより大きければ、相対モメンタムは正

アントナッチは、長期に渡る各市場のデータを使用し、比較的長い期間におけるモメンタムを利用すれば、市場平均を上回る利益が上げられことを紹介しています。

例えば、「12ヵ月の絶対モメンタムに従ってS&P指数と米国短期債に交互に投資するという戦略(絶対モメンタム戦略)」を採用した場合、S&P指数に投資した場合よりも低いリスクで、年率2%以上(!)の超過リターンを得られたようです。

この戦略、言い換えれば「過去1年間のリターンがプラスなら株を買うべし、リターンがマイナスなれば売るべし」ということです。
こんな単純な手法が果たして本当にうまくいくのでしょうか?売買コストや税金の扱いなど不明瞭な点がありますし、単に米国株で上手くいっただけではないかという疑問も湧きます。

そこで、過去25年間のTOPIXのデータを用いて、実際に日本株においても通用するか否か、確かめてみました。

2.検証

【前提条件】
・1991年1月~2015年12月のTOPIX(配当除く)を使用
・1991年1月の終値を10,000として、月次収益を掛け合わせていき、2015年12月時点の基準価格を算出
・バイ&ホールド戦略は、1991年1月に購入したものを2015年12月まで継続して保有したと仮定
・絶対モメンタム戦略は、過去12か月のリターンがマイナスとなった月の終値で売り、プラスとなった月の終値で再購入すると仮定
・売却時に含み益がある場合、税金分(20%)を差し引くものとする。
・また、取引の都度、売買コストとして総資産の0.5%を控除するものとする。

【結果】
・バイ&ホールド        10,000→ 9,043(▲9.5%)
・絶対モメンタム戦略(12ヵ月) 10,000→21,157(+111.5%)


おお!?

3.感想

以上の通り、アントナッチの紹介するモメンタム戦略は、日本株のある期間においても有効だったことが分かりました。

実は、本書でも米国以外の株式や債券、REITやコモディティ等、複数のアセットでモメンタム戦略を使った場合の結果も掲載されており、この戦略は多くの資産でリターンを向上させ、また全ての資産でリスクを低減する効果がありました。

僕の投資スタイルは、市場平均よりも低いリスクで平均以上のリターンを得ることを目指しており、この結論は正直に言えば魅力的です。

なお、モメンタム投資が有効である理由ははっきりとは分からないようですが、例えば各種の景気変動を反映しているという考え、行動経済学に基づく市場参加者の行動バイアスが影響しているといった考えがあるようです。

理論で裏付けられてはいないアノマリーではありますが、僕はプロじゃないので特段失うものもありません。モルモット的な意味で少し自分の投資にも取り入れてみようかという気になった次第です。

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