本日、主力の一角として買い増しを始めていたセゾン情報システムズ(9640)が業績予想の修正をお知らせしてくれました。
当期利益は+20億円の予想から△65億円の大幅マイナスに下方修正。セゾン情報システムズの純資産は約120億円ですので、純資産の半分を吹っ飛ばす計算です。まさに悶絶級のクソ決算と言っても良いでしょう。
損失の主な原因は以下の通りです。
セゾン情報システムズは、主力事業として親会社であるクレディセゾンのシステム構築を担当しています。
現在、クレディセゾンとみずほ銀行系のユーシーカード、オリエントコーポレーションのシステム統合プロジェクトが進行中ですが、これが非常に難易度の高い開発となりテスト工程でバグが頻発。2015年には日経コンピュータの「動かないコンピュータ」に掲載されるなど大炎上プロジェクトとなってしまいました。
上記のプロジェクトに関しては、昨年度決算で△53億円を製品損失引当金に計上し、通期赤字の原因となりました。他方、「これで悪材料は出尽くしただろう…」等と思っていた株主の慢心を見透かしたかのようにが、今回さらに△65億円のおかわりです。
日経コンピュータの記事によれば、開発業務に係る契約に基づきセゾン情報が受領した対価を「全額」返金する格好となったとのこと。これに対し、セゾン情報の見解は「当社としては合理的な和解案であると判断している」とのこと。
合理的とはいったい…うごごご……
セゾン情報を巡っては、昨年度にエフィシモが敵対的なTOBにより発行済株式の33%を保有する大株主となるというゴタゴタがありました。(今も大株主)
エフィシモは保有株を会社に高値で買い取らせる等の乱暴な投資を行うファンドであり、セゾン情報としてもあまり歓迎していないようです。
これを背景に、ツイッターなどでは「クラウンジュエル(=敵対的買収をされた会社が、自社の価値ある資産を会社から切り離してしまう戦術)」ではないかとの憶測もありました。なるほど株の買い取りを避けるために、会社の資金を親会社に逃がしてしまった…という見方もできる取引だと思います。
とはいえ、一般に開発プロジェクトが炎上するのは、受託者側の問題だけでなく、仕様を固めず頻繁に要件変更する発注者側にも問題があり、本件も発注者側が全くの無謬とは考えにくいところがあります。
客観的に見れば全額返金というのは流石にやり過ぎであり、だからこそ、「第三者機関であるソフトウェア紛争解決センターにおける中立評価手続において和解内容が合理的であるとの趣旨の評価がなされること」という条件が付いているのかなと思いました。
■ ■
さて、クソ決算を受けて株価は大きく調整することが想定され、ホルダーとしては保有を続けるか売るか悩ましいところです。ただ僕個人としては、下げた場合は敢えて買い増しをしたいと思っています。
というのも、セゾン情報システムズの主力事業であるHULFT事業が劣化したわけではなく、同事業はまだまだ成長が狙えると思われるからです。
以下は、セゾン情報システムズの直近四半期決算におけるセグメント情報です。
売上高の過半はカード事業(主にクレディセゾン向け)とエンタープライズ事業(主に西友向け)が占めておりますが、いわゆる受託開発であり収益性は良くありません。給与計算が主体のBPO事業は減損により大赤字であり、今年度中に他社への売却が決まっています。
他方、全社利益のほぼすべてを稼いでいるのはHULFTというパッケージソフトを販売している事業であり、この事業だけ売上高利益率が40%超と飛びぬけていることが分かります。
では、このHULFTとはどのようなソフトなのでしょうか。
セゾン情報のホームページでは、システム間のデータ連携を行うソフトと紹介されています。
一般にある程度の組織では基幹、製造、開発、会計etc…と様々なシステムが稼働しています。
このため、例えば僕の勤務先でも、「AシステムからCSV出力したデータを組み替えてBシステムに取り込む」といったデータの移し替え作業が発生し、非常な手間が掛かっていたりします。
システムの規模が小さいので手動で対応は出来ていますが、データ量が更に増えたらさぞ大変だな…等と思います。
こういったデータ連携作業を自動で行ってくれるのがHULFTだ、と認識しています。
HULFTについては、日本国内では圧倒的なシェアを有しており、日本を含むアジア圏でトップシェア、世界シェアでも4位に付けるなど日本発のソフトとして珍しく非常に競争力がある製品となっています。
以下のグラフは、HULFT事業単体での業績推移を平成16年度からまとめたものですが、圧倒的な急成長とはいかないものの、着実に、着実に収益・利益を積み上げてきている様子が分かります。
(注:平成22年3月期に利益率が大きく悪化していますが、これはセグメント会計上の本社共通費の配賦方法の変更によるもので、実質的には右肩上がりと捉えて良いはずです。)
HULFT事業こそが、セゾン情報システムズにとっての「金の卵を産む鶏」であるのです。
■ ■
そんなわけで、僕は引き続き同社株を買っていきたいと思っているのですが、一方でセゾン情報の経営陣に対しての注文もあります。
敵対的な買収を避けたいならば、そもそもきちんと結果(業績)を出すことが肝であり、HULFTの稼いだキャッシュを儲からない事業に費やしたり、無駄に現金として保有しているからこそ株価が低迷し、ファンドに目を付けられたという面があると思います。
中期経営計画で営業利益32億円を目指すとのことですが、これはHULFT事業単体での成長で達成できるレベルの利益水準であり、他の事業の利益を踏まえればもっと高い水準を目指してしかるべきではないでしょうか…等と思います。
しがない一株主ではありますが、新しい経営陣の方々には、僕のような木っ端株主がエフィッシモの応援団にならないような素晴らしい経営を期待しておるところです。
※本記事は、旧ブログで2016年に作成した記事をBloggerへ移転したものです。
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なお、本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しています。
興味がある方はこちらの一覧をご覧ください。
当期利益は+20億円の予想から△65億円の大幅マイナスに下方修正。セゾン情報システムズの純資産は約120億円ですので、純資産の半分を吹っ飛ばす計算です。まさに悶絶級のクソ決算と言っても良いでしょう。
損失の主な原因は以下の通りです。
セゾン情報システムズは、主力事業として親会社であるクレディセゾンのシステム構築を担当しています。
現在、クレディセゾンとみずほ銀行系のユーシーカード、オリエントコーポレーションのシステム統合プロジェクトが進行中ですが、これが非常に難易度の高い開発となりテスト工程でバグが頻発。2015年には日経コンピュータの「動かないコンピュータ」に掲載されるなど大炎上プロジェクトとなってしまいました。
上記のプロジェクトに関しては、昨年度決算で△53億円を製品損失引当金に計上し、通期赤字の原因となりました。他方、「これで悪材料は出尽くしただろう…」等と思っていた株主の慢心を見透かしたかのようにが、今回さらに△65億円のおかわりです。
日経コンピュータの記事によれば、開発業務に係る契約に基づきセゾン情報が受領した対価を「全額」返金する格好となったとのこと。これに対し、セゾン情報の見解は「当社としては合理的な和解案であると判断している」とのこと。
合理的とはいったい…うごごご……
セゾン情報を巡っては、昨年度にエフィシモが敵対的なTOBにより発行済株式の33%を保有する大株主となるというゴタゴタがありました。(今も大株主)
エフィシモは保有株を会社に高値で買い取らせる等の乱暴な投資を行うファンドであり、セゾン情報としてもあまり歓迎していないようです。
これを背景に、ツイッターなどでは「クラウンジュエル(=敵対的買収をされた会社が、自社の価値ある資産を会社から切り離してしまう戦術)」ではないかとの憶測もありました。なるほど株の買い取りを避けるために、会社の資金を親会社に逃がしてしまった…という見方もできる取引だと思います。
とはいえ、一般に開発プロジェクトが炎上するのは、受託者側の問題だけでなく、仕様を固めず頻繁に要件変更する発注者側にも問題があり、本件も発注者側が全くの無謬とは考えにくいところがあります。
客観的に見れば全額返金というのは流石にやり過ぎであり、だからこそ、「第三者機関であるソフトウェア紛争解決センターにおける中立評価手続において和解内容が合理的であるとの趣旨の評価がなされること」という条件が付いているのかなと思いました。
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さて、クソ決算を受けて株価は大きく調整することが想定され、ホルダーとしては保有を続けるか売るか悩ましいところです。ただ僕個人としては、下げた場合は敢えて買い増しをしたいと思っています。
というのも、セゾン情報システムズの主力事業であるHULFT事業が劣化したわけではなく、同事業はまだまだ成長が狙えると思われるからです。
以下は、セゾン情報システムズの直近四半期決算におけるセグメント情報です。
売上高の過半はカード事業(主にクレディセゾン向け)とエンタープライズ事業(主に西友向け)が占めておりますが、いわゆる受託開発であり収益性は良くありません。給与計算が主体のBPO事業は減損により大赤字であり、今年度中に他社への売却が決まっています。
他方、全社利益のほぼすべてを稼いでいるのはHULFTというパッケージソフトを販売している事業であり、この事業だけ売上高利益率が40%超と飛びぬけていることが分かります。
では、このHULFTとはどのようなソフトなのでしょうか。
セゾン情報のホームページでは、システム間のデータ連携を行うソフトと紹介されています。
一般にある程度の組織では基幹、製造、開発、会計etc…と様々なシステムが稼働しています。
このため、例えば僕の勤務先でも、「AシステムからCSV出力したデータを組み替えてBシステムに取り込む」といったデータの移し替え作業が発生し、非常な手間が掛かっていたりします。
システムの規模が小さいので手動で対応は出来ていますが、データ量が更に増えたらさぞ大変だな…等と思います。
こういったデータ連携作業を自動で行ってくれるのがHULFTだ、と認識しています。
HULFTについては、日本国内では圧倒的なシェアを有しており、日本を含むアジア圏でトップシェア、世界シェアでも4位に付けるなど日本発のソフトとして珍しく非常に競争力がある製品となっています。
以下のグラフは、HULFT事業単体での業績推移を平成16年度からまとめたものですが、圧倒的な急成長とはいかないものの、着実に、着実に収益・利益を積み上げてきている様子が分かります。
(注:平成22年3月期に利益率が大きく悪化していますが、これはセグメント会計上の本社共通費の配賦方法の変更によるもので、実質的には右肩上がりと捉えて良いはずです。)
HULFT事業こそが、セゾン情報システムズにとっての「金の卵を産む鶏」であるのです。
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そんなわけで、僕は引き続き同社株を買っていきたいと思っているのですが、一方でセゾン情報の経営陣に対しての注文もあります。
敵対的な買収を避けたいならば、そもそもきちんと結果(業績)を出すことが肝であり、HULFTの稼いだキャッシュを儲からない事業に費やしたり、無駄に現金として保有しているからこそ株価が低迷し、ファンドに目を付けられたという面があると思います。
中期経営計画で営業利益32億円を目指すとのことですが、これはHULFT事業単体での成長で達成できるレベルの利益水準であり、他の事業の利益を踏まえればもっと高い水準を目指してしかるべきではないでしょうか…等と思います。
しがない一株主ではありますが、新しい経営陣の方々には、僕のような木っ端株主がエフィッシモの応援団にならないような素晴らしい経営を期待しておるところです。
※本記事は、旧ブログで2016年に作成した記事をBloggerへ移転したものです。
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なお、本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しています。
興味がある方はこちらの一覧をご覧ください。
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