このグレアム銘柄がすごい!?~イサム塗料(4624)

ベンジャミン・グレアムとは、企業価値を客観的に数量化するアプローチを取った最初の著名な投資家と言われており、大投資家ウォーレン・バフェットが若い頃に師事したことから、「バフェットの師匠」としても有名です。
グレアムが用いた投資戦略として有名なのが、正味流動資産割安株に分散投資をする方法です。グレアムの著書『賢明な投資家』から該当箇所を抜粋すると・・・

この売買法の基本は、正味流動資産のみを考えた(つまり、工場設備を含むその他の資産は考慮に入れ名)簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得することである。われわれが買い付けた銘柄のほとんどは、この「スリム化された」資産価値の、3分の2以下の価格で入手したものである。この方法で毎年、幅広い分散投資(100銘柄以上)を行っていた。

・・・といった具合になります。
株価が上がって正味流動資産割安株も少しずつ減ってきているところですが、本シリーズ第3回目の今回は、大証2部上場のイサム塗料(4624)を取り上げたいと思います。

1.企業概要

イサム塗料(4624)は自動車補修用を中心に扱う塗料メーカーです。
現在の株価(378円)を基準にすると予想PERは8.25倍、PBRは0.34倍、配当利回りは2.65%。(SBI証券)
株価は正味流動資産以下(流動資産95億-総負債24億=正味流動資産56億>時価総額38億)であり、グレアム銘柄の条件を満たしています。
なお、固定資産の部にも長期預金(7億)や投資有価証券(15億)など換金性の高い資産を保有しており、実質的にネットネット株といえると思います。

2.自動車用補修塗料について

自動車用補修塗料とは、端的には自動車をぶつけたり傷を付けてしまった時に使う塗料です。
 
国内の市場規模について明確な統計はありませんが、専門のニュースサイトなどを見ると、近年は▲3~5%/年のペースで縮小が続いているとのことです。
日本の乗用車保有台数は5,800万台前後で横ばい傾向なので、クルマの補修需要にも変動が無さそうなところですが、何故なのでしょう。

この理由は、補修塗料は主に事故車両の修理時に使われるもので、交通事故の発生件数が減少していることから、連動して補修需要も縮んでいるのだそうです。
(ちょっと不謹慎なことを言うと、将来高齢ドライバーが増えれば、事故率が増えて需要が上向くかもしれません。)

また、これは補修塗料に限らない話ですが、近年は環境規制が強化されており、販売される塗料の質にも変化が出てきています。

塗料というのは、ベースとなる「樹脂」に色の元となる「顔料」と「添加剤」混ぜて製造し、「溶剤」で薄めて使用します。このうち「溶剤」部分は、長年にわたって中毒作用のある有機溶剤(シンナー)が使用されてきました。
しかし、近年は環境規制が進められ、塗料におけるシンナー使用量を少なくする低VOC化や、溶剤として水を使う水性塗料への移行がトレンドとなっています。

3.同業比較

自動車用補修塗料マーケットには、国内総合メーカーでは関西ペイントや日本ペイント、外資系ではアグゾノーベルやBASFコーティングスが参入しており、自動車補修塗料を中心とする企業ではロックペイントなどが有名です。

この中でイサム塗料の特徴を述べると、現場主義を掲げ、BP(車体整備業者)のニーズに即したニッチ製品の開発に定評があることや、国内の同業他社に3~6年ほど先駆けて水性塗料シリーズ(現在は3世代目の「アクアス」シリーズ)を販売したことが挙げられます。
過去10年間の業績について、事業領域の重なっているロックペイント(4621)と比較すると以下の通りです。(イサム塗料:青線、ロックペイント:赤線)




売上の規模ではロックペイント(赤)が約3倍と大きいですが、06年以降は利益の水準を大きく落としています。
一方、規模に劣るイサム塗料は利益が右肩上がりで、08年以降は同社の方が利益の絶対額が大きくなっています。
直近期の売上高純益率を見ると、ロックペイントの1.9%に対し、イサム塗料は7%。その差は5%とかなり格差が付いていることが分かります。

ところで、ロックペイントの利益は、2006年頃から減少傾向にありますが、この時期は中国の経済成長などをうけコモディティ価格が大幅な上昇を始めた時期に当たります。
塗料の原料は、主に原油やナフサから製造されるため、資源価格の高騰が悪影響を与えたことが原因と推察されます。
そこで、両社の売上原価率(左軸)とナフサ価格(右軸)の推移を整理して見たところ、なかなか面白い結果が出ました。


ロックペイントの原価率は、ナフサ価格に連動して上下しており、06~09年と11~12年は材料価格の高騰が売上総利益を圧迫したことが分かります。
他方のイサム塗料は、ロックペイントに比べてナフサ価格の影響を抑制出来ており、11年以降は逆に原価率を下げてきています。「これだ」とはっきりした理由は分かりませんが、以下のような点が影響していると個人的に推察しています。

・有機溶剤(シンナー)を使わない水性塗料で先行していること。
→シンナーは、トルエンや酢酸エチルなどナフサ由来の化学物質が使われることが多い。
→溶剤としてシンナーの使用を抑えることが、環境対策だけでなく、原価の抑制という面でも好影響も与えている。

・原料調達の改善
→原料の調達先を海外にも広げたり、汎用性のある原材料を優先して使う・・・といった取り組みが成果を上げている。

4.評価点

・株価は資産価値を大きく下回っていること。
・配当利回りは悪くないうえ、自社株買いに積極的で、発行済み株式の18%が自社株。
・当期も業績は好調。SBI証券の予想EPSは45.8円だが、3Q時点の実績EPSが54円と既に上回っていること。

5.懸念材料

・自動車用補修塗料市場の縮小。

6.勝手に割安度を評価すると

☆☆☆☆★(星4つ)

現在の資産価値と過去の業績だけを見れば、とんでもないバリュー株であり、MBOにも少し期待しています。
ただ、マーケットが縮小傾向にある点と、持ち株バイアスが掛かっている点を加味して、星を一つ減らしています。

なお、投資は自己責任でお願いします。

※本記事は、旧ブログで2013年に作成した記事をBloggerへ移転したものです。


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なお、本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しています。
興味がある方はこちらの一覧をご覧ください。

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