こんにちは。相場の養分かもねぎ(@kamonegi_kabu)と申します。
今回は界面活性剤メーカーである松本油脂製薬(4365)を分析します。
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ
グローバル展開も進んでおり、売上の55%が中国等を始めとする海外市場向けです。
それでは事業別に概況を見てみましょう。
石けんや洗剤の中に含まれることはご存じかと思いますが、他にも紙パルプ、クリーニング、ゴム、繊維など幅広い産業分野で使用されます。
日本国内の市場規模は2,364億円(2015年度・調査会社調べ)。
用途が多岐に渡るため様々なメーカーが参入しており、シェア首位は花王、以下、ADEKA、東邦化学工業と続きます。
松本油脂製薬は、市場全体ではシェア4.5%ほどの中堅メーカーですが、強みを持つ繊維用では国内のトップメーカーです。
上記を見ると、繊維用の比率が全体の6割を占め、特定の分野に特化していることが分かります。
繊維産業では「紡糸→織り→精練→染色→仕上げ」という各工程で界面活性剤が使用されており、例えば「糸を染める前に付着しているゴミを洗浄する」「糸が均一に染まるように調整する」といった機能を果たしています。
国内では界面活性剤の10~15%程度が繊維用に出荷されていると言われており、粗い計算で約300億円前後の市場規模があるものと推計されます。
上場会社の中では、日華化学・松本油脂製薬・第一工業製薬の3社が強く、調査会社のレポートによれば松本油脂製薬は売上ベースで2~3割のシェアを有していると言えそうです。
また、繊維産業全体の動向として、国内生産量が減少する一方、中国などのアジア諸国での生産が増えています。
松本油脂製薬も国内工場からの輸出とインドネシア工場からの出荷で対応しており、現在は、中国の繊維産業向けを筆頭に海外売上の方が大きくなっています。
当事業の主力製品は「熱膨張性マイクロカプセル」というものであり、国内市場では圧倒的なトップメーカー、世界市場でも3割弱のシェアを有し、アグゾ・ノーベル社に次ぐ2位に位置します。
市場規模とシェアから逆算すると、売上は年75億円ほどになるでしょうか
熱膨張性マイクロカプセルは、加熱すると体積が数十倍に膨張する性質を持った発泡剤の一種であり、自動車向け(アンダーコート剤、天井材等の内装材)、建築向け(シーリング材等)の用途に使われます。
松本油脂製薬は事業別の利益を開示していませんが、後述するように同業他社と比べても高い利益率を享受しており、その背景にはニッチ分野で世界シェア首位をうかがう製品を有していることがあると見ています。
数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。
景気後退期にも赤字にはなっていませんので、まずまずの業績と言えます。
数年に1回、大規模な自社株買いを実施していますので、EPSの伸びは当期利益の伸びを大きく上回っています。
繊維産業は、長い目で見れば世界経済の拡大に連れて緩やかな成長が見込まれ、界面活性剤の需要も微増傾向が続くでしょうし、熱膨張性マイクロカプセルについても自動車の軽量化ニーズによって需要が伸びているようです。
直近決算における正味流動資産は382億円(流動資産492億円-総負債109億円)となり、この他にも約69億円の投資有価証券を保有しています。
一方で松本油脂製薬の時価総額(自社株除くベース)は351億円(2019年11月19日時点)となり、株価は正味流動資産価値を下回ります。
まず売上高営業利益率を見ると、松本油脂製薬は16.0%と同業他社(4.5~7.2%)よりも大幅に高くなっています。
競合の多い界面活性剤だけでなく、マイクロカプセルのようなニッチかつ高シェア事業を有していることが影響していると思われます。
一方で、PERやPBR、配当利回りは同業他社よりも割安水準となっています。
というか、キャッシュが有り余っていますので、なんなら同業他社を即金で買収することすら出来そうですね…
株価チャートを見るとこんな感じ
やっぱり単元が高いので、個人投資家が買いづらいんでしょうかね…
株価が資産価値を下回る時期には自社株買いを、そうでない時期は、界面活性剤業界の中小企業のM&Aなんかを検討してくれると有難いです。
(参考文献)
・「2017年 高機能添加剤・ハイブリッドマテリアルの現状と将来展望」富士キメラ総研
・「2017年 界面活性剤の市場分析と各社の事業戦略」TPCマーケティングリサーチ(株)
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
今回は界面活性剤メーカーである松本油脂製薬(4365)を分析します。
1.事業内容
2.財務状況
3.まとめ
1.松本油脂製薬の事業内容
松本油脂製薬は1926年創業の化学品メーカーであり、「界面活性剤」が売上の3/4を占めています。グローバル展開も進んでおり、売上の55%が中国等を始めとする海外市場向けです。
松本油脂製薬 決算短信よりかもねぎ作成 |
(1)界面活性剤事業
①業界動向
界面活性剤は、混ざりにくいものを混ぜる「乳化」、泡を立てたり消す「起泡・消泡」、汚れを落とす「洗浄」といった機能を持つ素材です。石けんや洗剤の中に含まれることはご存じかと思いますが、他にも紙パルプ、クリーニング、ゴム、繊維など幅広い産業分野で使用されます。
日本国内の市場規模は2,364億円(2015年度・調査会社調べ)。
用途が多岐に渡るため様々なメーカーが参入しており、シェア首位は花王、以下、ADEKA、東邦化学工業と続きます。
「2017年 界面活性剤の市場分析と各社の事業戦略」より作成 |
②松本油脂製薬の界面活性剤
少しデータが古いのですが、2015年度における松本油脂製薬の界面活性剤の販売先を確認します。上記を見ると、繊維用の比率が全体の6割を占め、特定の分野に特化していることが分かります。
繊維産業では「紡糸→織り→精練→染色→仕上げ」という各工程で界面活性剤が使用されており、例えば「糸を染める前に付着しているゴミを洗浄する」「糸が均一に染まるように調整する」といった機能を果たしています。
国内では界面活性剤の10~15%程度が繊維用に出荷されていると言われており、粗い計算で約300億円前後の市場規模があるものと推計されます。
上場会社の中では、日華化学・松本油脂製薬・第一工業製薬の3社が強く、調査会社のレポートによれば松本油脂製薬は売上ベースで2~3割のシェアを有していると言えそうです。
また、繊維産業全体の動向として、国内生産量が減少する一方、中国などのアジア諸国での生産が増えています。
松本油脂製薬も国内工場からの輸出とインドネシア工場からの出荷で対応しており、現在は、中国の繊維産業向けを筆頭に海外売上の方が大きくなっています。
(2)高分子・無機製品事業
松本油脂製薬は、界面活性剤以外にも強い製品を持っています。当事業の主力製品は「熱膨張性マイクロカプセル」というものであり、国内市場では圧倒的なトップメーカー、世界市場でも3割弱のシェアを有し、アグゾ・ノーベル社に次ぐ2位に位置します。
市場規模とシェアから逆算すると、売上は年75億円ほどになるでしょうか
「2017年高機能添加剤・ハイブリッドマテリアルの現状と将来展望」より作成 |
松本油脂製薬は事業別の利益を開示していませんが、後述するように同業他社と比べても高い利益率を享受しており、その背景にはニッチ分野で世界シェア首位をうかがう製品を有していることがあると見ています。
2.財務状況
(1)業績推移
続いて、松本油脂製薬の過去の業績推移を確認します。数値は各年度の有価証券報告書における「主要な経営指標等の推移」を拾いました。
景気後退期にも赤字にはなっていませんので、まずまずの業績と言えます。
数年に1回、大規模な自社株買いを実施していますので、EPSの伸びは当期利益の伸びを大きく上回っています。
繊維産業は、長い目で見れば世界経済の拡大に連れて緩やかな成長が見込まれ、界面活性剤の需要も微増傾向が続くでしょうし、熱膨張性マイクロカプセルについても自動車の軽量化ニーズによって需要が伸びているようです。
(2)資産価値
収益面と合わせて資産価値も確認します。直近決算における正味流動資産は382億円(流動資産492億円-総負債109億円)となり、この他にも約69億円の投資有価証券を保有しています。
一方で松本油脂製薬の時価総額(自社株除くベース)は351億円(2019年11月19日時点)となり、株価は正味流動資産価値を下回ります。
(3)類似企業比較
繊維用の界面活性剤メーカーである日華化学(4463)および第一工業製薬(4461)を比較対象として、財務分析および株価分析を行います。まず売上高営業利益率を見ると、松本油脂製薬は16.0%と同業他社(4.5~7.2%)よりも大幅に高くなっています。
競合の多い界面活性剤だけでなく、マイクロカプセルのようなニッチかつ高シェア事業を有していることが影響していると思われます。
一方で、PERやPBR、配当利回りは同業他社よりも割安水準となっています。
というか、キャッシュが有り余っていますので、なんなら同業他社を即金で買収することすら出来そうですね…
3.まとめ
資産価値から見て格安なことは昔から知ってましたが、改めて事業内容を調べると、事業単体でも十分な価値を有してる優良企業ですね。株価チャートを見るとこんな感じ
やっぱり単元が高いので、個人投資家が買いづらいんでしょうかね…
株価が資産価値を下回る時期には自社株買いを、そうでない時期は、界面活性剤業界の中小企業のM&Aなんかを検討してくれると有難いです。
(参考文献)
・「2017年 高機能添加剤・ハイブリッドマテリアルの現状と将来展望」富士キメラ総研
・「2017年 界面活性剤の市場分析と各社の事業戦略」TPCマーケティングリサーチ(株)
本ブログ内で銘柄分析を行った企業の一覧を作成しました。
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